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少数株主としての戦い(検査役選任の申し立て)⑨

1.前回のサマリ

みなさま、こんにちは。前回、「少数株主としての戦い(事実の裏どりと不正の事実を確認)⑧」で、不正の疑い(議事録偽造、違法な株取得、横領等)について、その尻尾をつかみ、さらに相手への説明と裏付けとなる資料の提出を求めましたが、相手の意味不明な回答によるごまかし、開示拒否により、少数株主としての対応する限界を迎えておりました。そのような中、弁護士からの提案があり、早速それを実行することとしました。

2.会社法第358条(業務の執行に関する検査役の選任)

弁護士より、このままだと埒が明かないため、次の打ち手として、会社法358条に基づく「業務の執行に関する検査役の選任」について裁判所へ申し立てるよう申し出があり、早速検討することになりました。これは、株式会社において、不正行為や定款の重大な違反が認められるときに、裁判所に申し立てて、裁判所が外部の独立した弁護士を調査役として任命し、不正調査にあたらせることができるのです。なんと、報酬はすべて会社負担となり、最初は申立人が裁判所へ裁判所が決めた額のお金を予納し、調査完了後に会社へその立替分を請求するという流れとなります
検査役による調査で、不正の実態を暴くことを大きな目的としましたが、それ以上に、こちらが入手できない証拠を、この申し立てを通じて得ることが裏の目的でした。素人の我々には全く知り得ないものであったし、申立ては弁護士の独壇場であるで、非常に素晴らしい提案でした。さすがでございます。なお、申立てできるのは3%以上の議決権を有している株主です。

3.裁判所への申し立てについて

これまで株主帳簿閲覧請求等から得られた証拠を前提(下記)に、代表X氏の会社の不当支配(株の違法取得について)に関して、その業務執行と財産についての調査を裁判所への申し立てを行いました。

  • 平成18年の総会議事録偽造

  • 平成24年の総会決議を無視した前社長から株取得

  • その株取得の原資を会社財産を流用した疑い

  • 平成27年の株主総会議事録偽造+委任状偽造

  • 株主がX氏の家族で65%近く占められていること

実際申し立ての準備は弁護士が行い、私たちが事実関係についてチェックするという流れでした。そして作成された申立書は美しいものであり、完璧でした。弁護士は、申立てが認められるかの可能性は低いが、可能性はあるとのことで、申し立てを行いました。素人からみても、説得力があり100%間違いないだろう確信しておりました。

4.裁判所からの回答

しばらくした後、弁護士より連絡があり、無事に受理され要件を満たすとのことで、次は相手の言い分を聞くために、裁判所から相手方への連絡と、書面での主張を提出するよう命令をしました。このやり取りを通じて、最終的にどうするかを裁判所が決めることとなります。

5.相手の主張

しばらくして、相手の反論主張が裁判所へ提出され、弁護士経由でその反論文が連携されました。結論からすると、「逆切れ」です(笑)。「こんな小さな企業に対して、この申し立てをすることは、申立人(私たちに)別の目的があるとしか解しえない」といった感じです。再度ここで、どのような経緯で、検査役選任の申し立てを行ったかをまとめると

  • 平成18年に従業員であるX氏が代表取締役へ就任。(X氏の親から相続した株10%程度を所持するのみ)

  • 清算予定であったこ会社を乗っ取り、平成24年ごろに他株主より約8,000株(前社長夫妻の株)を取得し、また、X氏の家族も他株主より株を他株主より買いあさり、50%超の議決権を保持していることを主張。

  • 平成24年株主総会議事録を確認するも、「株主からの希望があればできるだけ株を買い取る」「財源は土地Aを売却資金とする」「株価は○○円」普通預金1,500万円を上限とする」など自株式を買い取ると推認する内容だが、決議内容が非常にあいまいで意味不明であること、譲渡制限がついているのも関わらず、それらの承認根拠が一切ない。(前社長に自己株式で買い取ることが決議されたこと、書類提出後に株買主がX氏になっており騙されたことは裏を取っていました)

  • その8,000株が自己株式として購入するための、財源を会社が所有する土地Aの売却資金としていることから、代表X氏がその土地売却心を流用して自身の会社の財産を流用した疑いがもたれたこと。

  • つまり支配権(50%超の議決権)を違法に取得し、会社を不当に支配し会社財産を流出していることが疑われ、有効ではないX氏が所持している株について、不適切な株数が含まれているので、これらの不正行為と株の有効性を問うことを目的として、検査役選任申し立てを行った。

<疑うに足る理由>

  • 株主総会で定款変更の決議された議事録(平成18年)で、不自然に「変更箇所の一部である譲渡制限の条項を削除したもの」が議事録として送付されてきた。しかも、X氏が提出してきた議事録の印影が、前年度の議事録と異なること、こちらで入手した議事録では、譲渡制限について記載があり、前年の議事録と印影も一致していることから、偽造した疑いがあったこと。

  • そして、偽の譲渡承認書(意味不明の書類)で株を勝手に買い上げようとしたこと。

  • 不正行為が行われた平成24年-平成25年の決算書類の開示を拒否してきたこと。

などなどです。これらの違法行為の疑いをみつけるまで、1年程度かかりました。基本的に、私がほぼ一人でこれらの違法行為とストーリーを見つけたのです。細かいところで弁護士のフォローもありましたが、私の手柄です。(笑)戦いの場を裁判所までもっていけば、相手も従わざる得ないので、その場に引きずり出しましょう。これまでの間、証拠の開示拒否や遅延行為、妨害行為(不要な資料を大量に開示)などで時間を要しましたが、何とか次へ進むことができました。

<振り返って思うこと>
帳簿閲覧権を行使し、15万円の帳簿謄写料を支払いましたが、ほぼ無意味でした。一方、支配権奪取にかかわる株主総会とそれらに関する一連の事実からストーリーを想定し、その文脈で不正を簡単に発見することができました。まず、その点に着目すると効果的に不正行為が発見できるでしょう。





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