【兵庫ブレイバーズ】久保康友と山川和大
久しぶりの日本球界
年明けからとんでもないニュースが入ってきた。千葉ロッテマリーンズや阪神タイガース、横浜DeNAベイスターズで活躍した久保康友投手が兵庫ブレイバーズに入団。2019年まで海外でプレーしていたが、2020年以降はコロナ禍で海外に渡れず、日本に無所属のまま留まっていた。
海外でプレーするためにまずは体を動かし、試合勘を取り戻す必要がある。数あるチームの中でどうして兵庫を選んだのか。答えは単純明快だった。
「家から通えるところだったんで……」
最初は練習参加という話がだんだん大きくなり、結果、選手として所属することになった。
「若い選手がいると体を動かしても気持ちいいですね」と久保は言う。
とは言え橋本大祐監督曰く、誰よりも早く球場にやってきて練習を始めている。練習も、若い選手と同等かそれ以上の量をこなしている。
実際に久保の投球練習を見ると、映像のリプレイを見ているかのようにボールがミットに吸い込まれていく。ただただ呆気にとられた。
「NPBに行きたいという選手をアシストしたりこのリーグをアピールしたい。いい選手も多いのでリーグに注目してほしいですね」
若手と首脳陣との橋渡しのような役目も担っている。
「僕でよければどんどん利用してほしいと思っています」
NPBから退いたあとは海外を主戦場に野球をしてきた。何もメジャーリーガーになりたいとかそういうことではない。「いつまでも野球を楽しくやりたい」のだ。
「日本って引退したら『もう二度と野球をやりたくない』っていう人が多いんですよ。でも嫌いにならなくてもいいから楽しくやっていきたいんです」
4月15日、今季初めてベンチ入りすると2点リードの9回に登板。
直球のMAXは141キロ。NPBで修羅場を潜り抜けてきたボールにバッターも釘付けになる。四球は出したものの、無失点に抑えセーブが付いた。兵庫の今季初勝利をアシストした。
マウンド上の久保は楽しそうだった。
「高いものを求められると思うので、与えられたポジションで高い意識を持ってやっていきたいです」
人生の中で野球は楽しむもの。久保のマウンドにぜひ注目してほしい。
よみがえった情熱
そしてもう一人、驚きのニュースが入ってきた。このリーグで初めてドラフトで指名された山川和大が兵庫に戻ってきた。
巨人を退団した後、合同引退試合に出場していたことがニュースになっていたが、改めて現役復帰することとなった。
「野球を離れて思ったのが『もう一回燃え尽きたい』ということでした」
2021年シーズン、肘と肩を痛めて、状態が戻らないままシーズンを終えた。
「結局戻らないままだったので、やり方を変えようかと思いました。元々僕の投球については野手のショートスローの感覚が原点なんですが、野手をすることで感覚を戻そうかと思っています」
そう、山川はオープン戦から野手として出場している。
そういえば初めに兵庫に入団した際も、内野手だった。上述の引退試合ではランニングホームランも放っていた。現在はDHが主になっているが、かといって野手を続けるわけではない。
「ある程度感覚が戻ったら、投手の練習を再開していきたいです。今年の目標はシーズン後に12球団合同トライアウトを投手として受けることです」
兵庫ブレイバーズは若い選手も多い。
「NPBを目指すにはどうすればいいですか、ってよく聞かれます。手本というかは一緒になって考えたりしていきたいです」
一緒になって、というよりは最前線でチームを引っ張っている。
ベンチの真ん前で声を出し、メンバーに声をかけていく。
気づいたことも投手野手関係なく声をかけて伝えていく。
「成績にこだわりはないのですが、2020年の時のようなボールを投げたいですね。あの時は本当に1点も取られたくなくて投げていました」
2020年、育成選手だった山川はファームで最多勝を獲得。7月までは失点もほとんどなかった。まずはそこに戻りたい。戻るために今、チームのために様々な役目を担う。
最後に気になっていたことを聞いてみた。
山川の背番号は30。しかし、球団は山川がつけていた背番号17を永久欠番にしていた。なぜ今回背番号30を選んだのか。
「初めて野球をしたとき、このチームに入ったときの背番号を選びました。過去の栄光は捨てました!」
また1から新しい山川和大を作っていく。ステップを踏んで新しい栄光に向かっていく。
(文・写真:SAZZY)