【神戸三田ブレイバーズ】あの日からまた前を向く 柏木寿志
ドラフト会議後
10月11日、ドラフト候補として全国放送で特集が組まれた。そしてその特集が終わった直後、ドラフト会議も最後の指名が終了した。
テレビの中の柏木寿志はいつもの明るい表情ではなく、沈み込んでいた。
スタジオの問いかけにも言葉少なく、ただ返事をするだけ。いつもの元気はどこにもなかった。
それから4日後、堺シュライクスとの試合前に橋本大祐監督と話をしていた。「いや、柏木めっちゃ前向きにやろうとしているよ。むしろ今まで以上にやる気になってる」
そこにはいつも通り、試合に備える柏木寿志がいた。
悔しかった。けれど…
「指名されなかったのは悔しかったです。あの後も落ち込みました。でも……」
そのあとの柏木にとって大きな出来事が待っていた。
「Instagramとかメールとかで番組を見てくれた人からものすごくたくさんメッセージが来ました。がんばってくださいとか、どこで試合見れますか?とか。こんなに応援されてたんだな、とかって実感しました」
メッセージに目を通して、闘志に火が付いた。
「あの番組に出てよかったなって思いました。来年こそ絶対NPBに行きます。育成とかじゃなく本指名されるように、今から鍛えます!」
その目はもうギラついていた。
今年独立リーグで指名された選手で育成以外で指名されたのはわずか1人。ならば誰もが認められるような選手になってやろう。そんな意思が見えた。
「あと古田(敦也)さんの言葉も響きました。『僕も25の年にプロ入りしたからやり続けていたらきっと叶う』って」
なんせまだ今年の末に20歳になるばかりなのだ。伸びしろも、まだまだある。
この試合では死球で出塁するとあっさり盗塁を決め、そして延長10回にはライト前にヒットを放った。
最終戦では4打数4安打の大当たり。
今季の成績はホームラン2位、盗塁1位。打率は昨年より8分上げた。
「来年も見ててくださいね!来年はチームも優勝して、タイトルも全部自分が獲ります!」
いつもの柏木が戻ってきていた。来年の10月には喜ぶ姿の柏木を見たい。
(文・写真 SAZZY)