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【06BULLS】引木拓己~好調の理由とトレーニング法~

覚醒の理由

オープン戦こそ打率1割だったが、開幕後、突然火が付いたように打ち始めた。5月から約1か月の間に3本のホームランを叩きこんだ。

その勢いのまま、6月に行われた福岡ソフトバンクホークスとの交流戦では2安打。

桜井広大監督も「いいでしょ、変わってきたでしょ」と手放しに誉める。それが引木拓己だ。

6月16日 ソフトバンク戦でヒットを放つ引木

秘訣は「ボールを見ない」

好調の秘訣を尋ねてみた。すると野球のセオリーとは全く別の言葉が出てきた。

「ボールを見ないことですね。ボールの軌道を予測して打つ、ということをやっています」

よく「ボールをしっかり見て打て」「最後までボールを見ろ」という指導をする人を見るが、「実際に最後まで見ていたらとてもじゃないが打てない」と引木は言う。

「最後まで見ていたら自分のスイングしようとしたところでスイング出来ない、振ったときには遅くなるので、周辺視野や空間認知能力を鍛えてボールが来るポイントを予測してスイングしています。配球も桜井監督と一緒に頭に入れて試合に臨んでいます」

桜井広大監督も「ボールを最後まで見る、というのは神話みたいなもの。実際には最後まで見てたら振ったときには振り遅れるから。引木が好調なのは配球の読みと引木の考えているボールの軌道と実際のボールの軌道がしっかり合ってるからだと思う」と評価している。

周辺視野を鍛える

ところで『周辺視野』はどうやって鍛えるのだろうか。
そのトレーニングの現場を見せてもらった。

トレーニングに臨む引木と嵯峨一矢選手(左)

片方がボールを持つ。もう片方は相手の腹から胸あたりを真っすぐ見る。落ちてきたボールを見て即座に落ちてくるであろう場所に手を伸ばす。(写真は上から下にボールを落とすもの)

「これをやることでボールの軌道からどのあたりにボールが来るかというイメージをしていきます」

引木がキャッチするターン。
横パターン。キャッチする人は前を向きボールが視界に入った瞬間に捕球の体制に入る

ボールが視界に入った瞬間に、落ちてくる場所を判断してボールを捕る。

引木は割と順調に取っていくが、今回相手役を務めた嵯峨一矢は時折ボールをこぼしながら進めていた。やはり見えないところからボールが飛んでくることもありなかなか難しいようだ。

これを数セット繰り返して試合に臨んだ引木。この試合でもきっちりとヒットを放っていた。
引木の周辺視野の広さと読みの正確さを示す一つのデータとして、規定打席到達者で三振が最も少ないことも挙げられる。

たゆまぬ努力

こうした地道な努力、そして引木のInstagramにたびたび投稿されているように筋力トレーニングに励んだ結果、現状打率2位、ホームラン3位と打撃で好成績を修めている。

NPBとの交流戦は上述の1試合のみの出場だが途中出場からの2安打ということを考えると、いかにゲームに入り込み、試合をよく見ていたかがわかる。

「ホームランに関しては内藤(晃裕)の1本目のホームランのようにセンターへ大きな打球を飛ばすことができたら理想なんですけど、なかなかそういうわけにはいかないですね」と話す。
とは言え、ホームランでは内藤と同数、そして出塁率、長打率ともチームトップだ。チームに欠かせない存在になっている。サードからの声も大きく、ムード作りにも一役買っている。

「ケースを考えてしっかりと打っていきたいです」

開幕当初は下位を売っていた打順も、すっかり3番が定位置となった。BULLS打線の中心として、勝負の夏に挑む。

週刊ひがしおおさかの取材を受け戸惑う菅野聖也(右)を温かい目で見守る引木。

(文・写真 SAZZY)

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