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Photo by
kumeinnovation
母と娘。
あの時、母は子どものように喜んだ。
娘の私が働きながら少しづつ貯めたもので、初めての海外旅行へ2人で行くことになったからだ。
しかし当時、母は癌を患っていた。
それも余命1年という事実をうすうす感じていたようで、この初めての旅が最後になるかもしれないと、思っていたようだ。
実はあの時、私は母に嘘をついていた。
ある時、母が「お母さんは、このまま死ぬの?」と聞いてきたので、「大丈夫だよ、私と弟を置いては逝けないでしょ。頑張ってね、お母さん!」と、私がきっぱりと言ったからだ。
それから母は二度と私に、同じことを聞かなかった。
今思うと、聞きたくても聞けなかったのかもしれない。
これは私自身が母親になってから、わかったことだ。
旅行の当日、初めて乗る飛行機の中で、二人だけの写真を撮った。
その時、嬉しくて抱き付いた母の体は、あまりにも細かった。
しかし、写真の中の母と娘は、とても元気そうだ。
遂に、途立つ時が来た。
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