鬼、神の座を追われたオニについて考える
2月2日(火)は節分。
「オニは〜外」と追い出された鬼は、どうしているのだろう。山に食べ物がなくなって里に下り、里の人々によって追われたサルやイノシシはどうしているのだろうか。
「鬼」という字は、「魂」という漢字に似ているように、形のない霊魂のようなものを指していたらしい。人間には見えず、それでも人や自然に大きな影響を与える存在だった。人を襲うだけではなく、人を助けることもある、人間を超えた存在だった。角があって、トラのパンツをはき金棒を持った、青や赤の色がついたキャラクターではない。このイメージは、後から付け加えられたものだ。
トラのパンツは、風水の鬼門が丑寅(うしとら)の方角なので、トラ模様となった。ついでに、ウシから、ツノがつけられた。
赤青の色は、実は五色あり、仏教の五つの煩悩を表しているそうだ。仏教が伝わってからできたものだ。色は、赤・青・黄・緑・黒。まるで戦隊もののヒーローだ。
昔の日本人は、人間を超えたものを「神」と言った。鬼もかつては神であっただろう。そんな神への信仰が薄れていくと、鬼は、神の座から引きずり降ろされ、そして節分の時以外は忘れ去られる存在となった。
鬼と同じように日本人に恐れられていた、実在の動物はオオカミだ。
オオカミは、「大神」とも書かれる。人間を超えた存在であった。昔の日本では恐れかつ敬われていた。
旅人が、森の中のオオカミの縄張りに入り込んで襲われることはあっても、オオカミが人里の村を集団で襲ったことはない。逆に、人々の作った畑の野菜を食べるシカやイノシシを食べてくれるのがオオカミだ。恐ろしいけれど、人を助けてくれる。それがオオカミだった。
そんなニホンオオカミも、周りの見る目が変わると、神の座を追われ悪役となり、明治時代を最後に絶滅してしまった。
芥川龍之介は、「桃太郎」の中で、世間の見る桃太郎や鬼とは違った視点で描く。
桃太郎は、穏やかに暮らしている鬼の国を襲った侵略者となっている。一つの物語も、違った見方ができる。
西野亮廣の「えんとつ町のプペル」が公開されているが、その映画評を見ると、「よかった」と「悪かった」に極端にわかれる。全く別の見方をされる。
「よかった」のコメントは、西野のサロンメンバーが書いているのか、絶賛する。「悪かった」は、映画の中身より、西野は宗教だ、詐欺だ、サロンメンバーがやらせの拍手をしている、だのという。違った見方というより、互いに一方的な意見を並べている。
2020M-1グランプリの決勝3組中2組は、漫才だ、漫才ではない、と、両極端の意見がコメント欄にあふれている。
優勝したマヂカルラブリーとおいでやすこがの漫才のことだ。
芸人さんの意見は、「おもしろければいい」という意見が中心になっているようだ。
かつて一世を風靡したやすきよの漫才も、しゃべくり漫才というより、横山やすしが「めがね、めがね」と動き回り、西川きよしもやすしを蹴ったり動き回ることが多かった。漫才かどうかなどという議論もなかった。そこまできまりはなかった。おもしろかったから、みんな笑う。
ゆるやかだったものが極端になっていく。一般人のコメントの意見も極端になっていく。アメリカの、トランプをめぐる民主党、共和党の選挙と同じで、極端に二極化していく。他人の意見を聞こうとしない。これはこうだ、と決めつける。
ディベートというのは、互いの意見を聞いて、それでも自分が思う意見を述べるものだ。相手の意見を聞かなければなにも起きない。
いろいろな見方があって当たり前。鬼は恐ろしくもあり優しくもある。
当たり前の意見を聞こうとしないで、自分の意見ばかり述べる。それでは分断が広がるばかりである。コロナ対策も、政党間では全く進展しない。
まずは、相手がどう言っているか、どう思っているか、耳を傾けることからはじめたい。
鬼と同じように、もともとは人間を超えた存在であった妖怪も、かつては神としてあがめられていたが、尊敬の気持ちがなくなるにつれて、神ではなくなっていく。ただの怖いだけの存在となった。
それを水木しげるがゲゲゲの鬼太郎で身近なものにした。
鬼もブームで見直されているが、一方的な見方で固定されるかもわからない。今の子どもたちは、鬼滅の刃が常識になるかもしれない。
前述の、トラのパンツをはき、赤や青の色をしている。そんなイメージだけがかつては一般的だった。そうじゃない鬼もいた。
神としている神社もある。
青森県弘前市の「鬼神社」、埼玉県嵐山町の「鬼鎮神社」、大分市の天満社境内「鬼神社」、福岡県添田町の玉屋神社境内「鬼神社」がある。最初から「悪」ならまつられることはない。鬼の二面性を示している。
鬼から話がとんでしまった。何事も、一つの見方にしばられないようにしたい。
画像は、オニグルミ。
種が堅く、表面がでこぼこしているところから鬼となったようだ。
茶色い種の周りには、青くて硬い実がある。種の中には食べられるでこぼこしたクルミの実がある。
種の周りの青い実、これが臭い。子どもの頃、臭い臭いと青い部分を大きな石の上でこすって茶色い種を取り出していたなあ。
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