アトラス彗星は見られなかったけれど、宇宙の神秘はたくさん見てきた人生だった
2023年に中国の紫金山天文台で発見されたアトラス彗星は、2024年10月に肉眼で観察できるとニュースで言っていたが、空を見上げても見えない。明るく見えていた宵の明星、金星さえ、しばらく曇り空の連続で見ていない。アトラス彗星は金星の横で流れているはずなのに。別に大雨になったわけではないが、それだけ天気の悪い日がずっと続いていた。これも私の運命だろうか。
彗星といえば、しっかり見えたほうき星があった。
1997年のヘールホップ彗星は、長い尾を引きながら低い空に浮かび、何日もその姿を見せた。
最初に見付けたのは、仕事終わりの駐車場。うわあ、と思い、もう一度職場に戻り、まだ残っている人に知らせ、一緒に眺めた。こんな絵に描いたような尾を持つ彗星なんて現実に見たことがなかった。生きているうちに彗星を見られたのは奇跡だろう。
その後も、毎日見えるので、私一人の時間、仕事終わりの楽しみとなった。しばらく彗星を見てから家へ帰る日が続いた。当時の職場は、少し小高い場所にあり、高さの関係か、家からは彗星が見えなかったので、ヘールホップ彗星は、一日の疲れを癒やす時間となった。
そこまで珍しくはないかもしれないが、2012年5月21日の金環日食を見た。月が太陽を隠し、月の周りから太陽の光がリングのように見えるものだ。多くの人と一緒に、わいわい言いながら観察した。次第に太陽が欠け、パッと暗くなり、次に光のリングが現れる。神秘的な瞬間だ。
今後、日本で金環日食が見られるのは、2030年だが、これは北海道での話。2041年にも金環日食があるが、北陸、東海と北近畿だそうだ。神戸からは見えるかどうかもわからないし、雨でも降れば見ることができない。
金環日食を観測できたのも奇跡の一つだろう。
生きているうちに見られるとは思っていなかった一番の神秘は、流星雨だ。
2001年11月18日の獅子座流星群だと思うが、記憶がはっきりしない。
「流星雨があるかもしれない」というニュースをたよりに、星がよく見える場所をさがして車を走らせた。すると、まさに雨のような流星雨が始まった。絵で見た噴水のように同じ方向に飛ぶ流星雨ではなく、あらゆる方向から次々飛んできた。車を止めて数を数えたが、数え切れないくらいの流れ星。
この時代に生まれてよかった。けれど、この日この時間に、こんな流れ星があることを知らずに、家の中にいる人も多かった。二年前に「流星雨がある」とニュースになったが、それが空振りだったので、今回は大々的に流星雨があるとニュースになったわけではない。それで、知らない人が多かった。
この景色を見られたことに幸せを感じながら、もういいだろうと車を走らせても、外の景色の中では、次々と星が流れる。
助手席にいた君は、まだ星を数え続け、六百個まで数え、「今日は、これくらいにしておいてやろう」と数えるのをやめた。それでも星は流れ続けた。
こんな経験は、生きているうちに二度とないだろう。そして、考えると、君に出会ったのも、宇宙の神秘の一つだろう。人と人との出会いというものも、数え切れない組み合わせがある中で出会うのは、やはり神秘としか言いようがない。
あなたとあの人との出会いも、奇跡のひとつだろう。
あなたがこの記事を目にし、ここまで読んでくれたのも不思議な縁のひとつだろうか。
それはともかく、宇宙の神秘は、すぐに消えてしまう。消えてしまうけれど、思い出は心の中でいつまでも輝いている。
人と人との出会いの思い出も、会えなくなっても、いつまでも心の中に残っている。
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