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花壇の植え替えを見て思う

 春だ。
 市民花壇の植え替えをやっていた。

 昨日までの花と全然違う花に植え替えている。明日は昨日までとは全く違う花壇になる。
 もう少し前の花を残しておけよ。せっかく種をつけかけたのに、それを全て抜いてしまう。もう少し今のままでいてもいいのに。全然違う新しい花に変える。人間の手によって新しいものに変えていく。

 作業員はせっせと作業をする。
 花を咲かせて種を作るという自然の姿と違うサイクルで、人間が植物を育てる。


 私も、新しい植物を育てるのが好きだ。
 自分で植物の種を次々まいていた時期がある。
 ミカンの種を植える。そこらにある温州うんしゅうミカンではなく、ちょっと変わった、ここらにないミカンの種。最近は種の少ない種類が多いけど、大きな種があるとそれを植えてみる。
 大きな種といえばライチの種も植えた。もっと大きな種ならアボガドも植えた。ブドウも一緒だけど、これらの種はグウーッと上へ1本伸びて「木」になる。ブドウも種なしが多いので、種があるものじゃないと育てられない。
 それぞれ春や初夏に種まきをしたけど、芽は出たものの、ほとんど冬を越せずに枯れてしまった。
 芽を出すまでが楽しみだったのだけど……。
 ブドウなど、なかなか芽を出さない。
 できるかな、できないのかと待つのも楽しみだった。
 ビワとかドングリは、よく芽が出る。
 すぐに芽を出すのはパパイアだ。
 みんな生きている。

 家の外でもよく種をばらまいた。
 タンポポの種も、綿毛をふーふーしながらばらまいた。シロバナタンポポは1回花を見ただけで、その後消えてしまった。ニホンタンポポは新しい群落を作って、セイヨウタンポポとは開花時期をずらして今でも共存している。私の手によってタンポポ群ができた。あと数年で消えてしまうかもわからないけど。それでも今を生きる。


 人の手で広がった植物といえばヒガンバナだろう。日本に伝わったヒガンバナは遺伝子の関係で種ができない。球根で増やすしかない。種は風や虫や動物によって運ばれるけど、球根はそれでは運ばれない。球根を運ぶのは「人」だ。人の手によってヒガンバナの球根が運ばれ、田んぼの周りに植えられ、日本全国に広がった。
 田んぼに人が種を蒔いたレンゲも、野生化して残っている場所もある。
 種は発芽しないが、ソメイヨシノも人の手によってクローンが作られ、日本中に広がって、日本の桜の風景を作ってきた。



 風や虫や動物によって種が運ばれる。自分で動けない植物は、何かを頼って子孫を増やしている。
 誰かの手によって生きている。
 一人では生きていけない。
 それが地球という世界に生きる生きものの姿。
 植物だけではない。
 人だけではない。
 生きものは一人では生きていけない。



 地球の生きものは一人では生きていけない。
 誰かがいるから生きている。

 あなたも私も、誰かがいるからこの世に生かされている。

 

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