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ニート、東北へ行く~東日本大震災ボランティア記~② 六~十一

以下の文章は3度のボランティア体験について2011年5月~12月にかけて当時書いたものです。

六・東京へ

 旅立ちの朝です。

 はじめての高速バスで、はじめて一人で来た東京。通り過ぎたのも含めて3回目だ。途中PAで浜名湖を、富士山を眺めた。東京でピザを食べた。気持ちを張り詰める前にただ目の前のものを楽しもうと思ったんだ。
 ただ迷わないように、山手線で研修がある高田馬場へ行こう。ホームへ上がろうとすると節電でエスカレーターが止まっている。確実に「まじかよ?」と思った。この荷物で階段を・・・ってエレベーターがあるさ。便利になれ過ぎてんなぁ。でも正直な気持ち。今思えば僕らが忘れないためにも止まってるエスカレーターは必要な気もする。ただ、原発勉強会で聴いた話によりゃ、計画停電なんてやる必要なかったって話だけど・・・俺たちはどんな生活がベストなんだろう。

 高田馬場のビルで午後3時から5時間研修。何が大事かってこと。安全が一番大事だってこと。作業する場所を見て、危険な場所はないか確認すること。地震・津波の際何処へ逃げるか。無理はしないこと。こまめに休憩をとること。ケガした際の応急処置の仕方。
 まず自分の命を守ることなんだ。ケガした人がいたとしても、その場が危険なら、僕らは避難しなきゃいけないんだ。さらなるケガ人を増やさないためにも。難しい…難しすぎる…でも、私が大地震に遭うことだってあるなら…
 思ったんだ。そのときの状況に応じて、自分たちで判断していかなければならないんだって。Mr.指示待ちとして知られる(誰も知らねぇよ。)俺の胸は今日も痛んだ。

 高田馬場から新宿へピースボートが連れてってくれるはずもなく(そう自分でやれることは自分でってことですなぁ)、山手線で新宿へ。ってそういや、明日の朝食、バスの中だった!てか夜も食ってねぇ!コンビニ発見!おにぎり購入!って俺は今どこに居る??駅内をさまよい、なんとか西口から地下道へ。って荷物が重い。あっさりと嫌になる。また節電で止まってる動く歩道に目が行く。知るかっ。
 そんなこんなで三井ビルのロイホにいるメンバーと合流。一週間ぶりの再会。こいからよろしくお願いします!そしてバスが待っている新宿中央公園へ!って歩道橋わたるの?!

 ボランティア保険加入証明書を見せ、バス代払って、バスに乗り込む。ありがとう!ついに出発です。で、つづく。

東京:くるり


七・石巻へ


初めて震災を感じた。ハッとするまで気が付かなかった。地面が割れていた。(ヘッダーの写真)

ここは宮城県に入ったところのサービスエリアかなんか(何処か憶えてない・・・観光地の地図に支倉常長メモリアルパークかなんかあったっけ。)。8時半に石巻に着くために3時間弱の休憩中だった。これが地震の爪痕なんだ・・・、これに津波が・・・。現実を見た気がした。これからやってくんだ。
 そうだ、やることも決まったんだ。新館のカスカ・ファッション(ピースボートが借りている工場跡地)を宿泊地に、その周辺のクリーン(泥かき)を行うことになった。男5人だのも。そりゃそうだよな!

 気を張りすぎないように、って思ってた。何かしたい!とか何かしてあげたい!なんて気持ちはそりゃあるさ。でも、先生に言われたことを思ったんだ。「何かできるなんて思わない方がいい。」ってこと。たくさんあるだろ?自分への過剰な期待や、やったぞ感、わき上がる何か、自己満足、俺ボランティアしてるぜ、やるだろ?感・・・いろんなものを中庸して、それでも、ただ目の前のことを少しずつやれたらいいと思ったんだ。ボランティアは当事者じゃないんだ。勝手にやってきてサポートしてるんだ。言ってしまえば。それでも。

 バスは石巻専修大学へ。ここが石巻のボランティアセンターがあるところであり、ピースボートの現地の本拠があるところだった。たくさんのテントがグラウンドに、その前のトラックで学生さんが走ったりしてる。大学生活は始まってるんだ。震災と並行しても。
 ディレクター(現地全体の代表)さんから話があって、再びバスでカスカへ移動。
そこでスリランカ・チームと相乗りになりました。わざわざ来てくれてんだ、スリランカから!嬉しいぜ。
 英語が喋れるメンバーがいたいたので、その人を通してちょっとおしゃべり。意外な国際交流だ。
さぁ到着だ…でつづく

G行為:RADWIMPS

八・この街で

カスカ到着。荷物を置いて、着替えて、さっそく作業へ。AD(カスカのトップだね)さんのお話のあと、LL(リーダーリーダー:現場での作業指示)さんに連れられ、初めての現場へ。ちなみに今日ついてくださったLLさんはボランティアでやってきて、そのまま3週間現地にいる方だった。長い間いる方が指示する立場になっていくみたいだった。

 さぁ、最初の作業する御宅までは徒歩10分ってこと。道具持って・・・ってそうそう、いろいろ覚えました。カクスコ(先の四角いスコップ)、ケンスコ(先のとがったスコップ)、ジョレン(ジョン・レノンの・・・バカ!クワみたいに土を掘り起こすやつよ)、ネコ(物運ぶ一輪車ね)、それから、土詰める土嚢袋と、ブラシ(作業後、現場の掃除用)と。
 さぁ行こう。吐き慣れない長靴での闊歩。って、それどころじゃなかった。中が剥きだしの傾いた家。ぐちゃぐちゃに壊れた車、傾きすぎたカーブミラー。そこらじゅうが地震の、津波の傷跡だらけだった。住民の方とすれ違う。「こんにちは!」ってあいさつする。「お疲れ様です。」って返してくださる。そう、此処にみんな住んでいるんだ。遠くから来た俺が見てるこの廃墟は、住民の方々にとって愛しき我が家なんだ。そう感じては、心をきゅっとさせた。現実に触れた?でも、多分まだまだなんだろう。だって、俺たちが行けるところは安全なところ。数ヶ月すぎた場所。それでもひどい。それでも…か。

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つづく。

九・ボランティア開始

 目的の御宅に着き、作業開始。今日の御宅はオーナーさんが不在でした。おられる場合は優先的にやってほしいところとか聞くみたいだ。LLさんの指導の元、庭に溜まった泥をかき出すことに。
 見た感じ庭はややこんもりとしていた。雨とか降ったときに通れるようにだろうか?家から出された畳で道が裏庭の方まで続いていた。裏庭は以前のチームがやったらしく、きれいに平らになっていた。そして御宅からはカーテンが風に揺られ、外に顔を出していた。
 やり方を教えてもらう。まずジョレンで地面を掘り起こし、泥を集め、山を作る。
その山からカクスコで泥をすくい、土嚢袋に詰める。その際、泥をすくう方と、袋持って待ちかまえる方の二人コンビで行う、と。袋は入り口を一回折り返すと泥を入れやすいんだってさ。
フォト 
 地面を掘る。すると、黒い地面が出てくる。そう、これがヘドロだ。ヘドロの除去。これが泥かき最大の目的だ。黒い地面をかすりとると、本当のこの庭の地面が見えてくる。ただ、その地面にもヘドロがしみ込んでいる場合もあってなかなか難しい。
 それ以上に、不器用でパワーのない俺にはなんでもかんでも難しい作業だ。どうしたらうまくかき出せる?どうしたらたくさんの泥を一回のカクスコですくえる?どうしたら泥がこぼれないように袋を持てる?ほんとに、メンバーに呆れられるくらいの不器用さを見せながら、LLさんやみんなに「こうするといいよ。」って教えてもらっていたうっかリーダーでした。みんな、見守ってくれてありがとう。そんな中、小さいスコップで植木の周りの泥を掘ったり、土嚢袋のひもをしばったり、と隙間産業をやってました。

 そういや、休憩は1時間に10分ぐらいだったかな。でも、正直、その日の天候やメンバーの体調によって変えるんだろう。今日はLLさんいるけど、いなけりゃ、きっと俺がみんなの様子と時間と照らし合わせて決めるんだろうな・・・。

 初日ははじめるのが遅かったから、作業時間は4時間ってとこ。間にお昼休憩1時間ね。まだまだ泥かきは終わらず、目の前にもられた山と、まだ手をつけてない部分を残し、今日のところは終了。また明日継続だ!

つづく。

FLY:Dragon Ash


十・雨の日に

 翌日も同じ御宅で作業です。今日は別のLLさん。他の場所も掛け持ちで、自転車でぐるぐる見回り。で、来られるまで、土嚢袋に詰め込み開始。今日の天気はあやしくて、どんよりとした曇り空。って思ったら、ものの30分もしないうちに降ってきた。強くなったところで、待機。屋根のあるガレージで助かりました。そう、雨が降った場合、基本作業を止めて待機する。雨の強さとか、どう見るかはなんだかんだで、リーダー次第なんだ。
 すぐに雨は止み、作業再開。ってまたですか!?雨再び。しかもけっこう強くなってきて、また待機。しかも今回は長い・・・。30分くらい待ったかな。体も冷えるし、このまま待機でいいのか?とLLさんに電話してみる。今は待機だということだった。中止の場合は連絡すると。待つこともボランティアとはいうけれど、目の前にすることがあるのに、ただ待つってのはどうも難しい。メンバーも手持ち無沙汰な感じ。一人はふらっといなくなってしまった。すぐ帰ってはきたけれど、うっかリーダーのチキンハートはボロボロさ。

 ようやく止みました!さぁ、再開だ。たまりにたまった土嚢袋を指定の道路脇へ移動だ!普通に行く場合、大周りしないといけないのだが、メンバーが裏庭から隣の家の庭に立てかけられた板の上を通れば、ショートカットできると発案!LLさんが隣の家の方に許可をとる!よし、いけるさ!そうなんだ。与えられたもんをただするんじゃない。今、いいと思ったことを実行していくことが大事なんだ!このやり方はまた進化して、裏庭近くの土嚢袋を運ぶ場合、裏庭の併の下にネコをならべ、塀の上からどんどん土嚢袋をおいていけば、ネコが板を通る手間がなくなるのだ!って説明じゃひじょーにわかりにくいけど、人が集まれば、不思議に思えば、いくらだっていい方法は産み出されるんだ!そんな感動があったんだ。フツーのことかもしれないけど、人とふれあいがなさすぎの俺にゃ。

 さぁ、昼休みだ。近くでは共産党が炊き出しをやってるらしい。「ボランティアのみなさま、ご苦労様です。」って街宣車っぽい車が通っていく。ああ、俺ほんとうにボランティアしてんだな。って今ネコから土嚢ひっくり返したばっかだろ…
 そして、ふれあい無き俺がどんどんふれあうことになる・・・つづく

十一・交流

 お昼を挟んで作業続行。なんと、途中から別のチームが合流。そう、早めに作業を終えた場合は、別のところに行くのだ。そのために終わる1時間前には連絡をしておかないといけないらしい(次の場所を早めに決められる。)。って、加わるはインターナショナル・チーム!国際交流再びだ!って俺が今やってることと、やってほしいこと言うの?そうです。リーダーですから・・・。俺たちゃ、土嚢詰めてるから、指定場所まで運んでほしい・・・みたいな。
 ってまた増えた?インタナショナル・チーム第2弾!って、なぬ?!ガラス片に関する指摘!そうそう、言われてた。ガラスには気をつけろって。だから、大きいのは別にしておいて、小さいのは砕いて土嚢と一緒にいれてたけど、何か問題かぃ?突き刺さりそうになったって?そいつぁあかん、より気をつけよう。でも、ちゃんとやってるつもりだったから、ちょっと胸にくるものがあった。
 まぁ、これがあったから、次の日同じチームと合同作業したとき、最初にガラスに関する共通の取り決めをしてから作業開始できたんだ。

 さすがにまぁ15、6人でやれば、作業が速い。うずたかく盛り上がってた山がみるみるうちになくなっていく。そして平坦な庭が目の前に。これが俺たちの作業の結果なんだ・・・なんて、ジンとする暇もなく、元からあったシートを別のチームが運び出そうとしていたので、オーナーさんのもんだから、と止める。で、同じ場所に敷いて置く。この判断、正直、自分でもよかったのか、わからない。「敷いてない方が地面が乾くのに・・・。」確かにもっともだ。畳んで別の場所におけばよかったかも・・・と、落ち込んでいる間に、我々が土嚢袋を置いたり、待機したりして汚れていたガレージもブラシで掃除し終わり、作業終了!!

 いろいろあって落ち込むことばっかだったけど、とりあえず乗り越えた。とカスカに帰って来て一息・・・って、あ、俺ゴーグルどこやった・・・?忘れた?あの御宅に?でも、リュックのとこにあったっけ?うわ~うわ~。最強に苛まれる心。チキンハート再びですよ。酉年だけに。(関係ない?)
 LLさんに話すと許してもらえた。グラシアス!!どうしてスペイン語かわからないが、感謝です。これからは気をつけます!ありがとう、支倉常長!スペインの風は私に味方してくださった・・・ 自分でもよくわかんないので今日は終わり!つづく。

ぼくらが旅に出る理由:安藤裕子


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