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「北斎話」葛飾応為:吉原格子先之図 - その2
すみだ北斎美術館に行くと、最後の展示で「北斎と応為のアトリエ」再現模型が出てきます。
ある友人が「あの再現模型が意味不明。」と話してたことがありました。私はすかさず「あの再現模型が重要なんだよ。北斎は一人で絵を描いたわけではなく、片腕になる応為がいたからこそ、あの素晴らしい絵が描けたんだよ。とても重要な展示なんだよ。」と語ってしまったことがありました。今思うと、語っているな。恥ずかしい。
さて、応為の話に戻します。
■女性としての悲しさ
いくら才能や技術があっても、当時女性が絵師として売れることはありませんでした。「北斎」ブランドがあったからこそ、お金が稼げて自分の好きな絵が描ける時代でした。
応為もそれが良く分かっていたようで、北斎の絵の中で可能な限り自分を表現していたようです。
悲しいかな、応為は北斎として生きることで作品を世の中に残す選択をしました。世間は応為の描いた絵を見て、「さすが北斎」と言いました。でもそれは実は応為が描いた絵かもしれないのです。今の日本にも通じる、なんとも痛快な話ですよね。
応為の独特の赤や光、あるいは線が、北斎の浮世絵にも潜んでいます。晩年の北斎の肉筆画にも、80歳を過ぎたとは思えない緻密な彩色の作例がいくつかありますが、応為がサポートしていたであろうと推測されてます。近年、研究者より、そうした指摘が出ています。
■太田美術館
応為の作品の中で最高の作品と思っている「吉原格子先之図」は渋谷区にある太田美術館(住所:渋谷区神宮前1-10-10)のコレクションとして所有しております(※作品は毎月入れ替えます。紹介している作品は常設はしていません)。
北斎、歌麿、広重、写楽などたくさんの素晴らしい浮世絵師がいますが、その誰より女浮世絵師「葛飾応為」を知ってほしいと思っています。ちょっと熱くなりすぎましたので、最後に太田美術館サイトの説明を記載して終わりにします。
葛飾応為「吉原格子先之図」紙本著色一幅 26.3×39.4㎝ 文政~安政(1818~1860)頃(太田美術館)
吉原遊廓の妓楼、和泉屋の張見世の様子を描く。時はすでに夜。提灯が無くては足元もおぼつかないほどの真っ暗闇だが、格子の中の張見世は、まるで別世界のように赤々と明るく輝き、遊女たちはきらびやかな色彩に身を包まれている。馴染みの客が来たのだろうか、一人の遊女が格子のそばまで近寄って言葉を交わしているが、その姿は黒いシルエットとなり、表情を読み取ることができない。 光と影、明と暗を強調した応為の創意工夫に満ちた作品で、代表作に数えられる逸品。なお、画中の3つの提灯に、それぞれ「応」「為」「栄」の文字が隠し落款として記されており、応為の真筆と確認できる。
今も昔も変わりません。
日本には実力ある女性がたくさんいるのに、世の中はそれを認めようとしません。だいたい、おじさんがその権力を握っていることが多いですよね。おじさんの習性として、自分の言うことを聞いてくれる人で周りを固める傾向があります。そのおじさんが本当の実力者なら良いのですが・・・。
あ、俺も「おじさん」か。