必ずバッドエンドを迎える夢の中のお姉さんの夢[4]
前回のお話[3]↓↓↓
【必ずバッドエンドを迎える夢の中のお姉さんの夢[4]🔫】
途中までは、前回と同じです。
▼▼▼
ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
『あら、誰かが来たみたい。
見て来るから、ちょっと待っててね』
立ち上がって玄関へと向かおうとしているお姉さん。
この時点で、俺は、既に【同じルート】を
¨何回も¨見ている。
お姉さんの結末を完全に、知っている。
最早【回避】も【救い】も無理ゲーって思うぐらいないことを知っている。
だけど、自分(プレイヤー)として、見ないわけにはいかないので、一応、フラグ回避(回収)を狙う。
お姉さんを「絶対に、死なせない」ようにする。
その為に、¨ お姉さんを護衛する ¨!!
チャイムの音を聞いて、立ち上がるお姉さんの手を掴んで
「一緒に見に行く!!」
『すぐ戻って来るのに…』
「それでも、行く!!」
俺は、お姉さんの手を握った。
どうせ死ぬことになっても、半分、確かめたいことがあったから。死ぬとわかっていても、お姉さんを見届けたいと思った。
可笑しな子とお姉さんは、思っただろう。
『じゃあ、一緒に行こうか』
「うん」
お姉さんを撃ち殺す黒い奴が一体誰なのか、今度こそ、見てやろう。
そして、出来るだけのことは、やってみようと思った。
さて、問題の(殺害)現場の玄関に辿り着いた。
扉のスライドガラスには、例の黒い奴が立っている。
俺は、お姉さんの側に立ち、身構えた。
ガチャッと扉を開く。
¨犯人¨が、どんな奴なのかと顔を見上げる。
ところが………そこだけ、¨ 記憶がない ¨
記憶というより、犯人が目の前にいるのに、容姿が不明。
透明人間ではなく、確実にいるのに、顔がわからない。
急に現れた犯人を見て、お姉さんが驚いた顔をしていた。俺の方を向いて
『逃げて!!!』
叫んでは、俺を後方へと押しやる。
玄関にいる犯人が一歩、踏み込んで来た瞬間
──バァァン!!
銃弾が鳴り響き、すぐ側で『あぐっ』という呻きが聞こえた。
それは、お姉さんの声であって、銃弾がお姉さんの肩を掠めた。
『あなただけは……私が、守るから!!』
「ううん!俺が、お姉さんを守る!!」
俺はお姉さんの前に立ち、犯人と対面する。
しかし、犯人が再び、銃口を構えた。
──ズダァァーン!!!
再び、恐ろしい銃弾の音が響いた。
「駄目!!!」
お姉さんが急に俺を庇って倒れた。
撃たれた瞬間、その時間が、スローモーションのように見えた。
その場に、お姉さんが、ドタッと倒れる。
──ビチャッ!!
真っ赤な水っぽい何かが弾けて、至る箇所を散らし、濡した。
「お姉さん……」
やはり【守れない】
やっぱり【救えない】
やはり、死んでしまったのだろうと思い、そっと、抱えた。
だが、お姉さんには、まだ、息があった。
『ごめんね…君を守れなくて』
『この先を、守ってあげられなくて』
『でも、君の先を……』
言いかけている途中で力尽き、くたりとして、動かなくなってしまった。
俺は、ブルブルと震えて、悔しげに泣いた。
もう、¨ 限界 ¨だった。
だから俺は
「どうして!何故!!
お姉さんを銃で、撃ったの!!??」
ギッ!!と、お姉さんを殺した犯人に向けて、叫んだ。
怒りをぶちまけると、いつもなら、すぐいなくなっている犯人は、まだ、玄関にいて、俺を見ていた。
すると犯人が口を開いた。
「本当に、¨悪い¨のは、俺か?」
「本当に、その女は、¨良い奴¨だったと思うか?」
「お前にとって、その女とは、なんだ?」
「お前には、その女は、良く見えていたかもしれない。
だが、他の奴から見れば、¨違う¨かもしれないということを覚えておくことだな」
お姉さんが『悪者』だったというのか?と俺が問うと、犯人がフッと笑った。
「なら、何故、お前は、¨此処¨にいる?」
「どう足掻いても、この¨物語¨が変わらないことをお前は、¨すでに、知ってるいるくせに¨」
痛いところを突かれた。
何をしても、足掻いたところで、救われない命。
無理なのを理解している。
だから、お姉さんの最期を見届けようと同行したのだ。
そんな『俺のことを』犯人は、わかっていた。
まるで、犯人も、自分と同じ【ループ】しているような口振りだったから。
「そんなこと!!言われたところで───」
───ブツン!
意識はそこで途切れてしまい、目覚めた。
目覚めてすぐの感想は、¨久しぶりに見た夢¨だった。
懐かしさもありつつも、どこか清々しい気分。
でも、目から、涙が流れていた。
太陽の光を受けたせいなのか、俺は、涙を拭って、ベッドから起きた。
「お姉さん…と、お姉さんを撃った犯人……か」
それから、もう、この夢を見ることは、なくなった。
…これが[エピソード4]であり[バッドエンド4]で、¨最終¨です!
【夢】だと自覚しているし、もう諦めているというよりかは、この頃には、懐かしさの方が勝っていました。
「ああ、またこの夢ね」
「お姉さんを救う方法は、ない!」
「悲しきバッドエンド」
「お姉さんに久しぶりに会ったな」
今なら、よくある転生モノや、時間がループする物語を見ているような、ゲームをプレイしているような感覚でした。
何をしても『絶対に救いようのない結末』が待っていることを知っていたので、結末を見ても、すんなり受け入れました。
もちろん、お姉さんを殺された怒りもあるし、犯人に対しての憎しみもあります。
けれど、犯人が言ったように『見方を変えれば』お姉さんは、違って見えていたのかもしれません。
自分の知らない彼女の顔があったら?
本当に、優しい人だったのか?
問いかけられても、うまく答えられなかったでしょうね。
だって、もしも……自分がお姉さんに【連れて来られた存在】だったとしたら…?
「誘拐」
そんな言葉が過りました。
何故、そんな風に思うのか。
思い当たる点が幾つかあるからです。
あんなに好きだと言っていたお姉さんを、俺は
『知らない』
それは、素性だけでなく、美人というだけで、どのような『顔』をしているのか、わからなかったから。
あの部屋では、お姉さんだけが¨絶対的存在¨だったから。
それももう、稀に見るだけでしたから、顔なんて忘れてしまったのかもしれません。
けど、いくら思い返しても、お姉さんが誰だったのか未だに【不明】
もちろん、犯人も知らないです。
ねぇ、お姉さん。
貴女は、誰だったのでしょう?
でもね、
『ありがとう』
『ごめんなさい』
このふたつを送ります。
なんとなく、わかったような気がしたから。
さて『必ずバッドエンドになる夢の中の夢』
この夢を見なくなったってことは、終わりということ。
いや、終わりというより、この夢から『卒業』って感じがしました。
強引かもしれませんが、後に、書いてはない(書く予定の)夢のお話と結びつけるような解釈もあります。
その時は、改めてその夢の時に書こうと思っています。