断食をしてみる
1.はじめに
4月末の退職から、連休もあり、そしてCOVID-19の影響で自宅にこもっていると体重がかなり増えた。最近はテレビ東京の「主治医がみつかる診療所」に出演している秋津医師にかかっていて、70キロは超えない様にと言われたやばいラインを超えてしまった。
2.断食にむけて
お腹の脂肪をとるには、カロリー消化するか、カロリーを取らないの2つしかないと思い、後者の方を選ぶことにする。その方が早そうだから。以前にも何度かプチ断食はした事があるが、だいたい週末に2日ほどすると、週明け会社に出なくてはならなくなって中断してしまった。でも今ならばもう少し行けるかもしれない。
私は40代半ばに十二指腸潰瘍による出血で入院した事がある。内視鏡治療を受けて、術後は3日間は絶食で点滴を受けていた。それから三部粥から徐々に戻して行き、普通のご飯を食べたのは1週間以降だったと思う。私はかつてヘビースモーカーでショートホープを好んでいてた。入院時に駐車場にとめていた車に煙草があるので、点滴台を引っ張って車に向かっていたら、どこに行くのですか?と捕獲注意された。結局は煙草は手に入らず、そうして点滴を受けているうちに体のニコチンが抜けてしまったのではなかろうか、退院してから煙草が欲しいとは思わなくなり、それからは禁煙を続けているが、まったく苦になった事もない。これも一種のデトックスではないかと体験から信じている。
3.食事について
断食では、胃腸を休めることが出来るし、皮下脂肪や内臓脂肪も消費されるだろう。加えて働きづくめの胃腸を休めてあげることも出来る。体内の毒素なんかも排出される。あとは食欲の問題だが、私はストレスからだろうか大食いした時期もあったが、逆に食べないでも割と平気。空腹でお腹が減ると言う経験も無い。なんなら将来には栄養を考えた合成食品をチューブに詰めてあり、それを吸って生きていける様になったら良いと思う。そんな食品を蓄えておけば、例えばコロナみたいは時にも買い物に行くリスクも避けられる。
4.食べることについて
もっとも、絶食については問題点がいくつかある。まず食の楽しみはどうだと言う点だが。私個人は食事は無頓着な方だし、好きで仕方ないと言う食べ物もない。食文化を探りながら、旅行して色んな土地の料理を味わったり、そんな楽しみもあろうが、それも趣向の話しだ。
食を生業にされてる方も多いけども、もしかしたら、例えば色んな仕事がAIロボットにとって変わられると言う位の時間軸でみると、人工的に衛生的に作られて、簡単に素早く摂取出来る食べ物に変わっていく事もあり得るのではなかろうか。
5.咀嚼について
それから、咀嚼の重要性と言うことを考えると、食べ物を噛む事で脳が刺激される。噛まないと痴呆が進行すると言う話しがある。私は、歯が悪い状態がかなり長く続いていて、その間に脳細胞はだいぶん衰えたことと思われる。それでも1年少し前にインプラント治療を完成して、十分噛める様になった。よく電車の中などに、煎餅を噛める喜びという様なインプラント治療の広告があって、それは確かだと手術を受けた者にはうなづける。だから人工的な食べ物はチューブタイプでちゅーちゅーだけでは駄目で、犬の歯固めみたいなものの併用が必要となろう。
6.絶食と栄養
次に栄養の観点から、以下にカロリーについてWikipediaからの引用をまとめた。
成人では基礎代謝量のキロカロリー値は、体重キロの25~30倍のキロカロリー程度である。ヒトは日々の活動のエネルギー源として、肝臓と筋肉にグリコーゲンを蓄えているが、これは、絶食後約1日ですべて血糖(グルコース)となり全身で使い果たされる。
グリコーゲンを使い果たした結果、血中グルコースが低下すると、肝臓中の脂肪がケトン体に変化し血流中に流出する。ケトン体は、全身でグルコースに代わるエネルギー源として利用される。
したがって、栄養が欠乏するとまず肝臓や筋肉中のグリコーゲンが、ついで肝脂肪がエネルギー源として使われる。飢餓状態が更に進むと、体脂肪や皮下脂肪など肝臓以外の脂肪が血流に乗って肝臓へと運ばれエネルギー源となる。これによりヒトは理論上は水分の補給さえあれば絶食状態で2~3ヶ月程度生存が可能であり、この限界を越えれば餓死に至ることになる。
仮に体重70kg、体脂肪率20%とし、脂肪のカロリーを9kcal/g、絶食により低下する基礎代謝量を1200kcal/日とすると、70 kg × 0.2(体脂肪率)× 9 kcal/g / 1200 kcal/日 = 105日となり、ヒトは絶食後3ヶ月半ほど生存することができることになる。ただし、これはあくまでエネルギーの計算上というだけで、実際には健康な状態を維持することは不可能に近い。
その理由は、ヒトの体内ではタンパク質、核酸、無機塩類、その他様々な生理活性物質が緩やかに代謝回転しており、それらのために、必須アミノ酸や必須脂肪酸、ミネラル類や、様々なビタミンなどを食物より摂取する必要があるからである。逆にこれらの摂取がない場合、筋肉などが分解して、別のタンパク質の合成のためのアミノ酸源として使われることになる。
と言う訳で、栄養をとらなければ、最終的には筋肉が分解されてしまう。引きこもりの断食で運動もしないで寝ていれば筋肉は痩せ衰えでしまうだろう。
つまり、すぐには死なない訳で、もし断食を自殺手段としても餓死するまでは容易ではない。ただしハンガー・ストライキの例で2019年に長崎県の大村入国管理センターにて仮釈放を求めた男性が5月下旬からハンストを行い、6月初旬点滴を行うも治療を拒否し、6月下旬に死亡したケースがある。それを考えると断食のリスクは大きいので、注意が必要である。
7.死に向けた断食の記事
それでも断食で死のうとした人がいて、以下は2012年の週間ゲンダイの記事からの紹介である。
「人生、最後が肝心 死に損なわないために」というタイトルで、どの様に死ねたらよいか、死に時はいつか、墓のあり方などについて山田太一氏、藤村俊二氏などのインタビューを記している。その後半に登場するのが、推理作家木谷恭介氏による83歳の誕生日に実行した「断食による緩慢な死」の記事である。
木谷氏は、「小沢昭一の小沢昭一的こころ」の台本を書いた。当番組はTBSラジオ放送1973年1月〜2012年12月28日まで1万回を超える長寿番組であり、転勤の多かった私はキー局TBSからの配信を色んなローカル局で聴いた。軽やかなインストゥルメンタルで鳴る番組のテーマ曲が懐かしいが、実はあの曲には歌詞もあった事はご存知だろうか?
YouTubeからのテーマ曲引用は↓以下リンクから
「明日の心だ」
歌:小沢昭一 作曲:山本直純 作詞:津瀬宏
さて木谷氏による週間ゲンダイの記事は以下の通り。
宗教学者の山折哲雄さんの『断食死のすすめ』を読んでこれだと思った。83歳の誕生日に実行した。周囲の人や家族が保護責任者遺棄致死に問われないよう、事前に月極めのアパートに引っ越した。オムツや尿瓶も買い込み、準備を整えて断食を開始した。
「空腹は5日で慣れます。禁煙よりも楽ですよ。20日目くらいからは、むしろ気持ちがよくなる。30日目くらいまでは『このまま力が抜けて、消えるように死ねるとしたら悪くないなあ』という思いでした。しかし最後は、以前から患っていた胃の痛みが強くなり、これでは穏やかに死ぬという目的が果たせないと思い、断念せざるを得ませんでした。都合38日間の断食でした」
断食による"緩慢な自殺"は失敗に終わった。だが、諦めたわけではない。
「長寿自慢でメディアに出ているような人は、勝ち組です。僕は負け組代表として何ができるか考えた。
死も、僕にとっては好奇心の対象であり、最後に残された『カード』なんです。近いうちに、もう一度挑戦しますよ」(木谷氏談)
なお両名は、2012年のほぼ同じ頃に亡くなっている。木谷氏の死因は断食ではなかった様だ。
木谷恭介氏
2012年12月9日(心不全のため85歳没)
小沢昭一氏
2012年12月10日(前立腺がんのため83歳没)
木谷氏の記事は、↓以下YouTubeの後半に登場
人生、最後が肝心 死にそこなわないために
(週刊現代2012年 大研究シリーズ引用)
8.おわりに
最後は、断食死の話しになったが、勿論それを勧める意図などなく、人それぞれに「理想の死」があるということを述べたかったものである。