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ルキアンからのメッセージ

2024年1月11日。

湘南ベルマーレのルキアンが、Xでジュビロサポーターに向けて以下のメッセージを発信しました。

本当に律儀な選手です。

今回のルキアンのメッセージ。ライバルチームに在籍している現在でもジュビロサポーターに向けて好意的に発信してくれた事。

それ自体は本当に嬉しいことです。

でも、これを単純に、

「ありがとうルキアン!やっぱり今でもジュビロを愛してくれているんだ。嬉しい!いつか帰って来いよ!」

で、終わって良いのだろうか?と感じます。

モヤモヤが残るんです。

このメッセージは契約交渉に絡む事であり、アビスパ福岡、湘南ベルマーレ、ジュビロ磐田にも影響しています。

選手自身の人生はもちろん、家族の生活、将来設計、その他私たちには知り得ない様々な個人的な条件や環境を総合的に考え、悩み、その上で決断しているはずです。

ゆえに、選手は契約の経緯・詳細について公に発信する義務は無いと考えてます。今回のルキアンの発信は極めて異例だと思います。

そこをわざわざメッセージを出してくれたところにルキアンの律儀さが表れていると感じます。

では、なぜルキアンが発信せざるを得ないと判断したのか。

それは、ルキアンのメッセージ冒頭の一文です。

最近、ジュビロファンからなぜジュビロに戻らないのかとたくさんメッサージをもらっています。

ルキアンが言う「たくさん」が、具体的にどれくらいなのかは判りませんが、このようなメッセージを発信せざるを得ないと判断したからには、かなりの数であったであろうことは想像できます。

私は、ルキアンに限らず、プロのスポーツ選手にこのようなメッセージを直接送ることは、好ましくないと考えてます。

それは、前述したように選手は悩みに悩んで決断しているからであり、それを尊重したいと思っているからです。


では、なぜ今回ルキアンにこのようなメッセージがたくさん届いてしまったのか?


それには、2021年のルキアンを振り返る必要があります。




ルキアンは、2019年7月~2021年12月までの約2年半、ジュビロ磐田に在籍。忘れられないエースストライカーです。

特にジュビロがJ2優勝とJ1昇格を果たした2021年。

ルキアンは、22得点をあげてJ2リーグ得点王に輝きます。まぎれもなくジュビロのJ2優勝の立役者でした。

しかし、2021年J2最終節翌日の12月6日。アビスパ福岡がルキアンにオファーを出していることが明らかになりました。

これには私も含め多くのジュビロサポーターが衝撃を受けました。

「ルキアンと一緒にJ1で戦いたい。何とかジュビロに残って欲しい。」

しかし残念ながら、2022年12月17日にアビスパ福岡へ完全移籍することが正式にリリースされました。

以下はルキアンのジュビロ磐田退団時のメッセージです。

今の気持ちを言葉に表すのは難しいです。自分が大好きになったクラブ、ジュビロ磐田を離れることは想像できませんでした。本当に自分のファミリーのような存在で、私の将来を想像するとジュビロ磐田ありきでした。しかし、人生はいろんなサイクルで構成されており、今日でジュビロ磐田の選手としては終わりになります。この決断をするのは難しくて、辛かったです。とても悩みました。自分だけではなく、家族やいろんなことを考えての決断です。
私はこのクラブで、自分の汗、血、魂、全てを捧げたことは間違いなく、悔いもありません。ジュビロ磐田がいるべき場所に戻れたことは嬉しく、自分は顔を上げて次の道へ進むことができます。ファンの皆様には申し訳ございません。プロ選手としてのルキアンは去りますが、1人のジュビロサポーターとしてのルキアンはいつも応援しています。
本当にありがとうございました。

ジュビロ磐田公式ホームページより

当時も苦渋の決断だったことがうかがえます。そこには、自分の事だけでなく家族の存在についても触れています。

先日、ジェフユナイテッド千葉に完全移籍が決まったドゥドゥ(エドゥアルド)の時も改めて感じたのですが、外国籍選手が、わざわざ縁もゆかりもない日本にやってきて戦っているのは、短い現役期間において、自分の人生、そして家族の生活水準の最大化のために、決断しているんだろうと想像します。

それが、時として外からはドライに見えるのかもしれません。

私もできることならば、ルキアンもドゥドゥもジュビロで一緒に戦って欲しかったです。

寂しいけれども、そのジュビロを去っていくの決断は、尊重しています。オファーを出したチームがジュビロよりも好条件だったのだと思います。




2024年。

ルキアンはアビスパ福岡を退団し湘南ベルマーレに完全移籍しました。

これに対し、

「湘南に移籍するなら、なぜ同じJ1のジュビロに戻らないの?」

少なからず多くのジュビロのファン・サポーターがこのような気持ちになったと思うんです。

その気持ち、痛いほどよくわかります。

あくまで個人的な見解ですが、これが、ルキアンに直接メッセージを送る行動につながったのではないかと推測します。

また、ある移籍情報を扱うSNSアカウントが、ルキアンに対し「磐田、京都、G大阪がオファー。」という投稿をしていました(ガセネタなのでリンクは貼りません)。

ソースが無い投稿だったので完全スルーしてましたが、改めて鵜呑みにしてはいけないと強く思いました。


そしてもう一つ大事なことがあります。

移籍は、選手の意志・希望だけでは不可能。

移籍と契約の事を知るには、名古屋グランパスサポーターのグラぽさんによる「オフシーズンのためにサッカーのサポーターが知っておきたい移籍と契約のこと」で非常に判り易くまとめられています。他サポでも当然当て嵌まる内容なので、メチャ勉強になります。

これを参考にすると、Jリーグの選手の移籍は

・選手の意思
・相手のチームのオファー

少なくともこの2つが無ければあり得ません。
これに加え、当該選手に契約が残っていれば、相手チームが所属チームに違約金を支払わねばなりません。


冒頭のルキアンのメッセージに戻ります。

最近、ジュビロファンからなぜジュビロに戻らないのかとたくさんメッサージをもらっています。

これに対し、ルキアンは明確に回答をしています。

しかし、再びジュビロのユニフォームを着てプレイするオファーは一度も受けていません。

これに尽きます。

今回は少なくとも湘南は、ルキアンにオファーを出したのでしょう。もし、ジュビロもオファーを出していたならば、ジュビロ移籍の選択肢が用意されますが、そうではない限りどうしようもないのです。

従い、湘南ベルマーレ移籍決定という結果だけ見て、なぜジュビロにもどらないのか?というメッセージをルキアンに直接送ることは、ルキアンにとって酷なことだと思います。

ルキアンはこれら移籍交渉の経緯を発信する義務なんて無いのですが、ジュビロサポーターに勘違いして欲しく無い思いからメッセージを発信したんだと思います。


そのため、私は「ルキアンはなんて律儀な選手なんだ。」と思ったのです。


しかし、気掛かりなのが、
「ジュビロからオファーが無かったこと」
まで公開する結果になっている点です。

ルキアンがメッセージを出さない限りこのことは公にはならないため、ジュビロ側がどう感じているかが心配です。




まとめです。

①ジュビロはルキアンにオファーを出していない。
②ジュビロがオファーを出していない限り、ルキアンがジュビロに戻る選択肢はない。
③よって、福岡→湘南移籍の結果だけを見て、ルキアンに対し「なぜジュビロに戻らないの?」と問われても酷な話。
④ジュビロサポーターに勘違いして欲しくないと考えたルキアンは、今回の経緯についてメッセージを発信する決断に至った。

前述のように「ジュビロがルキアンにオファーを出していた」というソースの無いSNSやネット情報を鵜呑みにするのは危険です。

「ああハイハイ、そんな話もあるのねー」

くらいで完全スルーするならいいのですが、昔と違って、今はSNSで選手本人に直接アクセスできてしまう時代です。間違っても選手本人やクラブに問い合わせることは止めた方が良いと私は考えます。

メッセージを読む限りでは、幸いにもルキアンはライバルチームに在籍してはいるものの、今でもジュビロやジュビロサポーターに対して好意的でいてくれています。


そのすばらしい関係は崩したくないな、と思っています。


最後までお読みいただきありがとうございました。
ジュビロ磐田とルキアンのファン・サポーターに歓喜が訪れることを願って。


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