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「唯一無二のバンディエラ」ジュビロ磐田 八田直樹

バンディエラとは、イタリア語で『旗手』、『旗頭』を意味する言葉とされています。
一般的には長く一つのクラブやチームに所属している選手の事を指し、サッカー以外ではフランチャイズプレイヤーとも呼ばれています。

Jリーグ公式ホームページより

2000年前後、ジュビロ磐田には黄金期と呼ばれていた時期がありました。中山雅史さん、名波浩さん、藤田俊哉さんなど、当時の磐田は日本代表選手を何人も輩出してきました。

いずれも

バンディエラ

と呼ぶにふさわしい選手でした。

長く同じクラブに所属し、象徴となるべき選手に対してファン・サポーターから称賛を込めて呼ばれる称号のバンディエラ。

しかし、昨今のJリーグでは、実力のある選手であれば若い時期に海外クラブへ移籍するのが常識になりつつあります。

また、Jリーグ内でも、できるだけ上のカテゴリへ移籍する実力者もいれば、残念ながら結果を残せず数年でクラブを離れる選手も少なくないのが実情だと思います。

従って、もはやバンディエラと呼ばれる選手が現れること自体が奇跡的なのかもしれません。

しかし、ジュビロ磐田にはかつての黄金期にひけをとらないバンディエラと呼ぶにふさわしい選手がいるのです。

八田直樹

2002年~ 2004年 ジュビロ磐田ユースに所属。
2005年にジュビロ磐田に入団。
2023年の今年に至るまで、プロとして19年間。
ユース時代も含めると実に22年間。

ジュビロ磐田一筋。

「ワンクラブマン」のゴールキーパーです。

その八田直樹が、2023年11月2日、遂にユニフォームを脱ぐことが発表されました。

もしかしたら、八田直樹という選手は、ジュビロ磐田のサポーター以外では、あまり馴染みが無い選手かもしれません。

通算出場記録は

J1リーグ戦:86試合
J2リーグ戦:69試合
カップ戦:27試合
天皇杯:17試合

2023年11月4日時点

決して出場試合が多い選手ではありませんでした。

日本代表選手でもありませんでした。

でも、八田直樹は、ジュビロ磐田の「唯一無二の」バンディエラと呼ぶに相応しい選手と思っています。

それは、ジュビロサポーターに心から愛されていたから。

この写真を見てもらえればわかると思います。

2023年11月4日、ジュビロ磐田 vs 水戸ホーリーホック戦終了後に行われた八田直樹引退セレモニーで掲げられた横断幕の数々です。

更には、この日対戦相手だった水戸ホーリーホックのサポーターからも「八田直樹お疲れ様」と書かれた横断幕が掲げられました。

ビジター席に掲げられた水戸サポーターさんによる横断幕

引退が発表されたのはこの試合の2日前でした。
遠征するだけでも大変なことなのに、短い時間で相手チームの選手のために横断幕まで用意して来てくれた水戸サポーターさんには本当に感激しました。


選手として華々しい記録は無かったかもしれません。

しかし、ファン・サポーター、選手、監督、スタッフ、多くの人達に長く、長く愛されたこと。

バンディエラと呼ぶに相応しい実績と思います。




私は過去のnoteで、2度八田直樹について書かせていただきました。

1度目は、2023年シーズンの契約更新がリリースされた時。

2度目は、2023年7月29日 J2リーグ第28節 いわきFC vs ジュビロ磐田で三浦龍輝が脳震とう疑いで退場し、八田直樹が緊急登板した時です。

それらの記事を書く際に共通した思いは

「控え選手としての振る舞い」

に感銘したことでした。

ゴールキーパーというのは特殊で厳しいポジションです。
たった一人しか出場できません。

特に1人の絶対的な守護神が存在し活躍し続ければ、二番手、三番手のゴールキーパーが試合出場できる機会は先ずありません。

八田直樹の磐田でのゴールキーパー人生は、常に絶対的守護神がその前に立ちはだかりました。

プロ入団時は日本代表の川口能活。2015年からはカミンスキー
2019~2020年にフェルナンドフベロ監督が正ゴールキーパーとして八田直樹を復活させて活躍を見せますが、2021年以降は三浦龍輝梶川裕嗣にポジションを奪われました。

それでもなぜ八田直樹が長くジュビロ磐田の選手として在籍しているのか?

それは、試合に出られない時でも決して腐らず、チームのため、勝利のため、練習と準備を怠らない姿勢を続けたことだと思っています。

そうは言っても、試合に出場できない選手を長く在籍させることには、賛否あるかもしれません。

でも、ジュビロ磐田が19年もの長きにわたって八田直樹という選手と契約し続けたのは、毎試合出場することだけではない、選手としての価値を見出していたからではないでしょうか?

特に入団間もない若手は、得てしてすぐに試合には出場できない場合が多いのですが、ベテランの八田直樹が懸命に練習に取り組む姿勢は、きっと大きな影響を与えたに違いありません。

私の過去のnote記事で何度も取りあげましたが、古川陽介はルーキーイヤーで試合に出場できない時期、八田直樹の声掛けが力になった事を語っています(YouTube動画 2:04~)

針谷岳晃は、八田の引退発表時にXで「鏡です」と泣き顔のマークと共に発信。選手としての姿勢を称賛していることがうかがえます。

そして、2021年6月まで磐田に在籍し、現在VfBシュトゥットガルトで活躍する伊藤洋輝はインスタグラムで磐田時代にどんな時でも練習に付き合ってくれた事への感謝の気持ちを発信しました。

後進の成長に少なからず影響を与えていた八田直樹。選手はもちろんサポーターもそのことをよく理解していたからこそ、19年間愛され続けてきたんだと思っています。




八田直樹が試合のメンバー入りした際、大好きな時間があります。

それは試合開始前のウォーミングアップ。

アップ前と後に、必ずスタンドに来てくれたサポーターに向けて手を挙げて拍手と共に声援に応えてくれることです。

【2023年3月25日 ルヴァンカップGS vs 札幌戦】

【2023年4月19日 ルヴァンカップGS vs 横浜FM戦】

サポーターを大事に思っていてくれる八田直樹の人柄が表れるシーンです。この光景がもう見られなくなると思うと本当に寂しく思います。




八田直樹の引退セレモニーでの挨拶。

サポーターの声がしっかりと届き自らの力になっていたことを語ってくれました。

一方で、批判的なことを言うサポーターにも触れ、自らが強くならなくてはいけない、上手くならなくてはいけないという気持ちで取り組んでいたと語ります。

しかし、批判意見に対し、

「ちょっとイラッとしましたけど」

と言って、しんみりした雰囲気の中でも、しっかり笑いを挟むところは良かったですね。

御家族から花束をもらい、涙涙の感動の場面。
思わずもらい泣きしてしまいます。

胴上げで19年間を労う選手達はみんな笑顔でした。

そして、最も感動的だったのは、ヤマハスタジアムでの最後のPK。

キッカーは八田直樹の息子さんでした。

3回蹴って最初の2回は止めたんですよね。やっぱりプロの意地をみせたのかなと感じました。このことについて記者会見でも述べられていてやはり「甘いもんじゃないよ」ということを示したかったそうです。

3回目はゴールを決める形で終わりスタンドは大盛況。

3本目のPKを決めてハイタッチ

その後もゴール裏からは八田直樹のチャントがエンドレスで響き渡りましたが、私はそのチャントを聴きながらヤマハスタジアムを後にしました。

・・・

感動の引退セレモニーの模様は、ジュビロ磐田公式YouTubeチャンネルで公開されました。こちらも是非ご覧ください。




ジュビロ磐田一筋19年。

このような選手は、もう2度と現れないかもしれません。

「唯一無二のバンディエラ」
八田直樹を応援できたことを本当に誇りに思います。

本当にお疲れ様でした。
第二のサッカー人生を心から応援しています。


「ありがとう!ハチ!」


最後までお読みいただきありがとうございました。
ジュビロ磐田と八田直樹のファン・サポーターに歓喜が訪れることを願って

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