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漢文石碑巡り vol6「通天閣の名付け親が遺した勧善の歌」その2(第三善~第五善)
※訓読、字解、訳はすべて藤澤章次郎『藤澤南岳先生勸善歌略解』(泊園書院.1923年)を参考に、一部現代風にアレンジした。
第三の善
【原文&訓読】
是是非非辨銖兩(是を是とし非を非として銖兩を辨じ)
德慧術智期高朗(德慧術智、高朗を期す)
達學通理貫古今(学に達し理に通じて古今を貫き)
視自有形至無象(視て有形より無象に至る)
聰明即是第三善(聡明即ち是れ第三の善)
勸君平素慎所養(君に勧む平素、養う所を慎め)
【訳&字解】
【堅い訳】
是は是、非は非と、良く物事の良し悪しをわきまえて、一分一厘の細かい処までも見分け、
正しい智慧見識で以て筋道のよく分った気高いものとならねばならぬ。
また学問を進め道理をさとって、古や今の事に明らかで、
形あるもの形なきものを問わず、総ての事の道理を見破らねばならぬ。
聡明は即ち是れ第三の善である。
君に勧む平生によく気をつけてその智を磨けと。
【ギャルによる訳】
おけまるとだめぽよが分かってて、こまけぇとこめっちゃ見てて、頭キレッキレ、まぢ見る目ある〜なギャルになりたくね?
是是非非:『荀子』脩身篇「是是非非、謂之智、非是是非、謂之愚(是を是とし非を非とする、之を智と謂い、是を非とし非を是とする、之を愚と謂う。)」
銖兩:漢の銖は日本の一分六厘弱にあたり、兩は三十四銖、即ち我が三匁八分弱にあたる。(1匁=3.75g)
德慧術智:徳義や道術に基づいた正しい智慧。『孟子』尽心上
孟子曰「人之有德慧術知者、恆存乎疢疾。獨孤臣孽子、其操心也危、其慮患也深、故達。」
第四の善
【原文&訓読】
乃長衆人安萬民(乃ち衆人に長となり萬民を安んずる)
古重斯德呼為仁(古この徳を重んじて呼んで仁となす)
諭蒙容昧示中道(蒙を諭し昧を容れて中道を示し)
又爲一世護彝倫(又、一世の為に彝倫を護る)
禁奢蓄財不是吝(奢を禁じ財を蓄うるはこれ吝なるならず)
擬施陰德恤窮貧(陰徳を施し窮貧を恤まんと擬す)
寛裕即是第四善(寛裕即ち是れ第四の善)
勸君和氣宜如春(君に勧む和気宜しく春の如くなるべし)
【訳&字解】
【堅い訳】
大勢の人の上に立って萬人を安らかにする徳を昔から仁と名付けてこれを重んじている(、これが第一等の行いであるが)。
さらにまた愚かなる人々を諭し教えて正しい道に導き、
またその時代の人倫道徳を引き興すように務め、
猶お或いは平生に奢りをやめて金銭を蓄えるのも、吝嗇のためにするのではなく、
それを以て陰徳を施して貧乏や難儀な人を救うつもりで蓄える。
このように有形に無形に世の中の利益を計らねばならぬ。
要するによく人を容れる寛裕の徳、即ちこれ第四の善である。
君に勧むらくは春のような和気を以て人に接してもらいたい。
【ギャルによる訳】
ギャルサーのリーダーやってるリオ先輩なんだけど、まぢ人望たけーの。めちゃむずのパラパラも優しく教えてくれるし、ちょいグレだったアオイも最近ちゃんとやってるよー。リオ先輩のおかげで今サークルのみんなまぢバイブスあがってるかんね。鬼リスペクトだわー
仁:すぐれた徳の名であって、物徂徠は之を「人の長となり民を安んずる徳」と説いている。
蒙昧
第五の善
【原文&訓読】
處事断事尚果決(事を處し事を断ずるは果決を尚ぶ)
赤心亦當比金鐵(赤心亦當に金鐵に比すべし)
若欲一怒安斯民(若し一たび怒って斯民を安んぜんと欲せば)
祇合知恥守大節(祇だ合に恥を知って大節を守るべし)
剛毅即是第五善(剛毅即ち是れ第五の善)
勸君勇武作人傑(君に勧む勇武人傑と作れ)
【訳&字解】
物事を取りはからうには、はっきりと思い切りがよいのを第一とする。
その精神は金や鐵のように堅くなければならぬ。
或いは天下の人を安らかにするために公の憤りを発するというような大勇気は恥ずべきことを恥じ、節義を守るところの強い気象がなければできぬ。
即ち剛毅の気象是れ第五善である。
君に勧む勇武にして人に優れた人物とならんことを。
若欲一怒安斯民:孟子