あしらの俳句甲子園2024 その8 俳句の妖精 前半
一つ前の試合が「若水」について熟知しているベテランの試合ならば、我々の二回戦は少し若水わかってないかも?と思わせる戦いではあった。「正月の水、それがどうしたの?」と我々は思っていたかもしれない。
うすうす審査員の方にも伝わっていたであろう。皆、頭を痛めたに違いない。
時間は少し戻ってその日の昼頃、実際に見た景色を詠んだ方がいいよと作戦会議で(説明に困らないから)職場の口腔ケアについての事を私が俳句にした。
それに釣られて花河童さんも母の介護の記憶を頼りに水を飲ませた俳句を詠んだ。
そしてきのこ氏も何故か介護の句を出してきた。
「僕のはフィクションですけどねー」
アンタ獣医やん、老いた牛にトロミを付けた水飲ませるんかいと心で突っ込んでいた。若水だからすぐにしっかり混ぜないとダマになるとろみ剤もするする溶けるのだとなるアドバイスをしつつ、前日道後温泉で母の形見を紛失しかけた花河童さんが一句捻り出していた。
予選突破が意外な我々は本戦提出をギリギリの12時半まで俳句を悩み、推敲していた。
そして第二回戦の相手は幸の実ちゃんではありませんか!四年前に見た時からみると大きくなっちゃって!親戚のおばさんみたいに成長を喜んでしまいました。トーナメントで最後の枠をトランプで引き当てた強運。
幸の実ちゃんと両親のチーム、「辞令は突然に」(突然辞令が来ちゃうのだそうです)
トーナメントの抽選の時には対戦したくはないと思い願ったのですが、神様のイジワル、準決勝で戦うとは。楽しんでやるしかありません。
幸の実ちゃんが、
「ギリギリ投句党の党首と戦えるなんて楽しみ!」と笑顔を振りまきながらマイクで会場に言い放つと、
「ギリギリ投句党の党首でございます。本日で党員数が増えております。まだまだ受け付けております」
そう、きのこ氏が会場へ呼びかけていた。
ちなみにrnb海南放送から放送されている長寿ラジオ番組「一句一遊」や愛媛県松山市が運営する「俳句ポスト365」のサイトへ投句するのが、ギリギリに投句している事を指す。(他の夏井いつき組長がかかわる投句先も含まれるであろう)誰だって名乗って良いのだが、きのこ氏がスマートフォンに名前にナンバーを付けていたから党員になりたい人は北野きのこ氏へX(元Twitter)にDMするとナンバーが付くみたいです。
あ、さて、
お題「若水」なんだけど、宮中行事で天皇に元日奉じる水なんだそうで、元旦で朝に初めて汲む井戸の水で神棚に供えるとある。
若水は邪気を取り除き、その水で供物や家族の食事を作ったり、口を漱いだり、お茶を立てたり。
元日の朝早く、人と会話をせずに若水を汲み、君津地方では正月三ヶ日は男性が台所に立ち、女性は休んでいたのだとか。
自分を顧みればお正月は若水だのへったくれだのなく、働いておりましたし、水は普通に消費していたし。
若水をあまり理解しないまま、
二回戦第二試合が始まった訳であります。
先鋒戦、
万病に効く若水のウォシュレット(辞令は突然に)
若水にするする溶けるとろみ剤(蝦夷のきのこ)
先程行われていた、くじら雲vs雪うさぎとは何かレベル、いや世界が異る戦いの始まりです。
幸の実ちゃんと戦いたくない!
うっひゃーあ!
そんな私を置き去って、
ギリギリ投句党の党首vs党員の楽しげなディベートです。
「ウォシュレットと言う着地に驚いているのですが、若水と言う要素に含まれているのではないでしょうか?」
「要素に含まれているとは思いますが、ウォシュレット使った人の気持ちとして強調しました」
個人的にネットでは偽科学を撲滅する動きをしておりますので「万病に効く」なるパワーワードは叩かざる得ません。
「万病に効くウォシュレットは無いと断定させて頂きます。井戸の水がウォシュレットにあまり繋がらないと思うのですが」
あみまさんの必死の父親としての反論が骨太に感じます。
「現代において井戸から実際に汲む人は少ないと思います。歳時記でも心新しく汲めば水道水でも若水となります。願いを込めてウォシュレットすれば万病に効くのではないのかな(30秒です)」
きのこ氏の最後のツッコミ、
「若水、新年のおめでたい季語でございます。ウォシュレット気持ちは良いけど下のものだとおもいます。取り合わせた上で成り立たせているのか教えて下さい」
攻守入れ代わり、
幸の実ちゃんの質問!
「一読してよくわかる句だなと思いました。するするとオノマトペ用いた理由を教えて下さい」
きのこ氏に入れ知恵をした部分が効き目を発揮します。
「とろみ剤というのはするする溶けないものであると言うのが一点です。それが若水を用いることによりするする溶ける特別感を出すためにするするというオノマトペを使いました」
「とろみ剤ではなんの料理をしているのか景として立ち上がって来ないので実際何をしているのか教えて下さい」
「とろみ剤の「剤」の字が大事なんですね。介護の現場で使われている薬剤である事がGoogle検索するとすぐ分かるかと思います。誤嚥を防ぐためのとろみをつける薬剤であることがわかると思います」
さて、旗を掲げて勝敗を決める時間!
白二本で蝦夷のきのこが一勝です。
五十嵐秀彦先生の講評です。
「介護の現場で正月なんてわからない人を相手にしているけども、なんとか正月の気持ちをなんとか見せたい。それが伝わって来ました」
あまりにも長くなったので後半に続きます。