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012 おにぎり その2(おにぎり研究家、お米について語る)

 『おにぎり』というエッセイで、おにぎり研究を趣味にしようか、ということを書いた。
 読書以外、とくに趣味はないし、おにぎりの研究というのは、グルメのまち、金沢らしい。ここにいる間限定の、ご当地趣味、みたいな感じです。

 今回は、おにぎりに向いているお米について、考えてみようと思う。

おにぎり向きのお米とは


 それは、適度なねばりのあるお米、だと思う。
 お米をにぎる場合、ねばりがないと、米つぶが、ばらばらと崩れてしまうのだ。
 この見解は、インドネシアでの経験に基づくものである。

インドネシアの寿司

 実は、数年前、ジャカルタに住んでいた。
 ジャカルタは、中華料理屋よりも日本食レストランが多いという、世界的にもめずらしいまち。
 向こうにいたころ、寿司の食べくらべをしたことがある。

 エントリーは、
1.五つ星ホテルの高級日本食レストラン
2.日本人が経営する和食屋
3.日本人が手掛けるローカル向け寿司レストラン
4.日系スーパーのお惣菜
5.ローカルの回転ずし

 二〇軒以上の飲食店を訪れた。

 やはり、最も違いを感じたのは、ネタ。
 回転ずしでは、人気のないネタは、何度も解凍と冷凍を繰り返すようで、水っぽい味のぼけたマグロのにぎりが平気で出てくる(一番人気は、サーモン)。

 一方、高級店になるほど、ネタの種類も豊富で、寿司の知識のある人がちゃんと管理したものが提供される、という印象。

 しかし、シャリはどこで食べても同じだった。
 一応、ジャポニカ米なのだが、現地生産のお米は、ねばりがない。お箸で寿司をつかんだだけで、ぽろぽろと米つぶが落ちるので、醤油をつけるのもひと苦労。加減を間違えると、しょうゆ皿の上で寿司が崩れてしまう。こんな失敗、日本ではまずしない。

 そのとき、それまで意識したことはなかったが、寿司やおにぎりには、形を保つためのねばりが必要なんだな、と思った。

余談 

 余談ですが、これは、インドネシアのお米がおいしくない、という話ではありません。
 日本のお米でチャーハンをつくるときは、冷凍するなどのひと手間が必要なように、料理には、やっぱり向き不向きの食材があるのだな、ということです。
 懐かしくなって、たまにナシゴレンをつくるけれど、向こうの調味料を使っても、日本のお米でつくると、エスニックチャーハン、という感じになります。


 ということで、寿司にしろ、おにぎりにしろ、お米を握る場合は、ねばりが最も重要だと思う。
 あまりねばりが強いと、口ほどけが悪くなるので、適度な、というのも忘れてはいけない。

 じゃあ、日本のお米なら、どれでもいいじゃん、と言われそうだが、おにぎりは、握ってすぐに食べることよりも、お弁当に持って行くことの方が多い。
 冷めると固くなるお米もあるので、やっぱり研究のしがいがあるのである。



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