005 耳かき
耳かきが、やめられない。
だめと分かっていても、毎日のようにやってしまう。気持ちよくてやっていたらエスカレートして、やらないと落ち着かない体(耳?)になっていた。
綿棒を耳の奥まで入れて、鼓膜に近いところをこりこりやる。
たまに鼓膜から乾いた耳あかが、ぺりっと剥がれる感覚がして、猛烈に耳かきがしたくなることも。完全に中毒。
調べると耳掃除は月に一度、耳の入り口から一センチあたりの耳あかを取るので十分とある。耳あかが乾いたタイプの人は、自然に出てくるので、耳かきはほとんど必要ないという意見もあって、ぎくりとした。
今のところ、聞こえ方に問題はないけれど、中毒はまずい。
耳かき欲をぐっとこらえて、週に一度、入り口付近の掃除だけにしてみた。それがしばらく続き、さらに二週に一度まで減らせたが、気付けばまた毎日、耳かき。いけない、と再び奮起して頻度を減らすというのを、ここ数年繰り返している。なんと弱い意思だ。
でも、耳かきの快感というのは、けっこう抗いがたいものなのかも。
九州国立博物館を訪れたときのこと。日本刀が置いてある展示室でスタッフの方から、刀についてクイズを出された。刀の鞘にあるこの小さな溝、これは何のためか?
正解は、笄(こうがい)という頭髪を整えるための長細い棒を入れるため。なるほど、時代劇でも巾着を引っさげる武士はいない。刀の鞘がカバンの代わりか。
そして、この笄のおしりに、なんと、耳かきが付いているのだ。
いざとなれば、腹を切る覚悟のある武士でさえ、平生は耳のかゆみのことなんか考えていたのかと思うと、なんだかちょっと安心した。
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