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033 デパート
旭川には、二つのデパートがあった。
駅前の西武と、丸井今井である。
クリーム色の壁に、駅の方に面してガラス張りのエレベーターがついた、昔ながらのデパートという感じの西武。
建物が新しく、採光が取れた設計が、モダンで明るい雰囲気のある丸井今井。
どちらも、旭川の中心部の顔であった。
網走に住んでいた小学生のころ、祖父母を訪ねたときに連れて行かれる旭川のデパートは、あこがれの場所だった。
丸井では、田舎では売ってない、かわいい子供服や雑貨などを、祖父母にたくさん買ってもらった。お昼は、いつも西武のレストラン街だった。
今から、二十年前の話である。
祖父母のところに帰省するのは、夏と冬の休みの二回。
休みが近づくと、デパートで何を買ってもらおうか、あれこれ考え、授業はうわの空。早く、休みになればいいのに、と思いながらノートをとった。
思い出は、冬の方がある。
旭川までの移動が大変だったし、正月には初売りがあったから。
大晦日に、特急で4時間近くかけて旭川駅につくと、西武で、お正月のごちそうを買い込んだ。
地下の食品売り場は、人でごった返して、一目で特別だとわかる大きなカニやいくら、刺し盛りなどが、照明の下で輝いていた。
元旦は、お年玉をもらって懐は温かくなっても、店はどこも閉まっている。
翌日みんなで一緒に行く初売りを心待ちにしながら、正月番組を見たり、祖母が焼いてくれたおもちを食べたりして、のんびり過ごした。退屈だけど、なんかうれしい。
それが、わたしの子どもの頃のお正月で、デパートは欠かせない存在だった。
年に二回しか、旭川のデパートに行けなかったけれど、デパートの空気を感じるときがあった。
祖父母から送られてくる、宅急便だ。
段ボールのなかに、西武の白地に青と緑の二重丸の包装紙を見つけると、母が中身を開けるのを、わくわくしながら待った。
紙なのかインクなのかわからないが、包装紙のあの独特の匂いを嗅ぐと、今でも当時のうきうきした気持ちが蘇る。
調べてみると、閉店は丸井今井が2009年で、西武は2016年だった。
もう、そんなに経つのか、と驚く。
丸井は建物をそのまま使ってテナントを入れ、西武のほうは取り壊して、新しいビルになったらしい。
いまは、ちょうどお歳暮の時期。
デパートがなくなってから、旭川の人たちは、どこでお歳暮を頼んでるのだろう。駅前のイオンだろうか。
デパートの包装紙が見られないのは、少し、さみしい。