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『ファースト・カウ』

今回も変な映画観ました。

監督:ケリー・ライカート
クッキー:ジョン・マガロ
キング・ルー:オリオン・リー

http://firstcow.jp/
オレゴン州

貧しくて、森がうっそうと茂っていて、雄大な河が流れている。
全然まだまだ工業化していなくて、先住民がいて、ヨーロッパから来た偉そうな仲買人が別荘を建てて農場経営者を招待している。経営者は奴隷をいかにこき使っているか苦労(という名の自慢)話をしている。気が抜けていて、ふんぞり返っているだけの経営者たち。
そんなオレゴンで、さえない料理人(クッキー)と、どこからともなくやってきた中国人(キング・ルー)の二人の男達が何かとちょろまかしながら商売で一発当てようと目論む。
豊かな自然が二人を取り囲み、静かだけれども一触即発の微妙なスリル。オレゴンで生きてオレゴンで死ぬ、そんな映画だ。

アメリカでは着ている服や格好について、街ゆく見知らぬ人でも褒める文化があると聞く。それはなぜなのか気になっていたが、この映画がその理由のヒントになるのではないかと思う。
つまり、目立つのだ。いや当たり前なのだが、誰もが貧しい土地だと余計に目立つ。真新しい格好、見たこともない品物。どこから持ってきたのかよくわからないけれども、なんとも美しい心打たれる何か。ボロを着ているのに靴だけ明らかに新しい。率直に欲しい。とにかく声をかけてみて、持っている人と関係を持てないか探る。

やましい人間たちとは裏腹に、ただ黒く光る牛の目に心奪われた。

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