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祈っていいの
これまでのあなたの人生にもっとも影響を与えた本はなんですか、と問われれば、私は迷わずエリザベス・ギルバート著 "Eat, Pray, Love"(邦題:「食べて、祈って、恋をして」)を挙げる。確か、2007年頃のことだったと思う。本屋の洋書コーナーで買った。英語の勉強のために、適当な本を探していたところ、この本の表紙に惹かれて手に取った。シンプルでかわいい! 直感、虫の知らせ。その当時は、そんな目に見えない力の存在のことなんて、考えもしていなかった。でも、確かにそんな力がこの本に出合わせてくれたのだろう。この話は後に、ジュリア・ロバーツ主演で映画化されている。
この本の中で、にっちもさっちもいかない絶望的な状況に陥った主人公のリズは、真夜中にバスルームの床に座り込んで、神に祈る。Hello, God. How are you? I'm Liz. It's nice to meet you. 神への祈りは、こんな中学一年生の英語の教科書に出てくるような挨拶で始まった。その後続く彼女の切羽詰まった必死の訴えに、神はどう答えたか。Go back to bed, Liz. それは、彼女自身の声、心から響く温かな声だった。ベッドに戻って寝ましょう、リズ。実際、その時点その状況では、これ以上にベストなアドバイスはなかった。
もっと具体的な祈りをする場面もある。リズは、世俗的なお願いを神にするのはよくないと思っていた。この世の試練は神が与えてくれたものであるのだから、それを変えてくださいなんていうのは、信心が足りないと思われるのではないかと。それを聞いた友人のイヴァは言う。「どこからそんなバカげた考えがきたのよ。あなたはこの宇宙の構成要素、この宇宙の一部で住人なの。だから、この宇宙のすべての出来事に対して自分がどう思っているか言う権利があるわ! 絶対、あなたの意見は考慮されるはずよ!」「本当?」「本当よ!」 そして、リズは、神へお願いの手紙を書く。どうかこの泥沼の離婚調停が解決しますように導いてください。和解できて、私達二人が今より自由で幸せになれば、この地球全体の幸福にも、ほんの少しかもしれませんが、貢献することと思います。嘆願書を書き終えると、イヴァは承認のサインをする。彼女は運転中だったので、「よし、サインした! 心の中でサインしたよ」と。そして、リズに、他にサインしてくれそうな人は?と問う。両親や友人や会社の同僚、さらに大統領や有名人、故人も、小学校時代の担任の先生の名前も挙げていき、それぞれみんなが、その神への嘆願書にサインをしたところを想像した。さて、次に起こったことは? リズの携帯電話が鳴る。「いいニュースよ!離婚調停、合意されたわよ!」と言う弁護士さんの声。
もう何年の前になるが、映画「祈り~サムシンググレートとの対話」を観た。様々な分野の著名人のインタビューから成る映画で、祈りの力の証左を示す内容であった。その中で、医学博士のチョブラ氏は、「祈りは個の意識を集合意識につなげ、一体感というフィールドに導き、癒しを与えてくれる行為です」と述べている。
そして、エドガー・ケイシーの「神の探究」によれば、祈りとは、わたし達が肉体意識を、創造主の大いなる意識に同調させようとする行為だという。祈ることは、天の導きと助けを切望していることを示すこと。
「集合意識」「創造主の大いなる意識」、言葉は違えど、チョブラ氏もケイシーも同じことを言っている。私という個人を超えた存在と心を通わせようとすることが祈りなのだ。わたし達は、その大きな存在に同調することができる。つながることができる。リズができたように。
大きな存在の、その全体の利益、全体の幸福になるような祈りというのが肝なのだと思う。細胞の一つ一つが健康なら、身体が健康であるように、一人ひとりの人間の心身が健康で幸福なら、社会が健全でないはずがない。わたし達は、自分の幸せが宇宙の幸せに不可欠なんだということにまず気付こう!そして、祈ろう!祈りは具体的であっていい。大きな存在は自身の幸福を望んでいるはず。そこに自分の想いを重ねてみよう。私が幸せになることが、世界の幸せになるのです。みんなの幸福を求めよう。自分の幸せを祈っていいのです。