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「根性」が「気配り」に変わった理由

困った、書く事がありません。書くことがないとき、私は「募集中」のタグを見ることにしています。

今回、「創作にドラマあり」のタグを見つけたので、なんとなく書き始めました。そして、いきなり筆がとましました。

ドラマって何よ?

よくわからないので、ふんわりとWikiを見ました。

ドラマ(drama)(ギリシア語: δράμα) とは、演劇、芝居[1]すなわち劇のことである。これは観客の目の前の舞台で生の俳優が演じる演劇だけでなく、ラジオの音声やテレビ画面で聞かせたり見せたりする劇、すなわちラジオドラマやテレビドラマをも指す。こういった意味以外に戯曲・脚本をもドラマと言う[1]。また劇的な事件や[1]劇作品のストーリー・物語上の大きな山場を指してドラマとも言う。
1^ a b c “ドラマ”. デジタル大辞泉. 小学館、コトバンク. 2017年9月17日閲覧。ごめんなさい、ますます意味が分からなくなりました。

なるほど、よくわからないけど、何かしらの山場を書けば言いという事ですね。がんばります。
せっかくなので、絶対に自分しか知らないことを書こうと思います。


『ときめきメモリアル Girl's Side』にドラマあり。

『ときめきメモリアル Girl's Side』の最新作が近日発売されるようです。楽しみです。

私は、このゲームの1作目の下請け担当ディレクターでした。20代のペーペーディレクターでした。
厳密には、開発途中に辞めてしまって、スタッフロールに載っていないので、スタッフではないのかもしれません。

私が開発途中に辞めてしまったのは、開発途中に人生最大の失言をしてしまったためです。

失言内容は、ざっくりいうと、こうです。

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要するに、主語を履き違えられて納期が遅延する理由を作ってしまったのですが、これ、冷静に見てみるとむしろ「美談」ですね。

クリエイティブとは神聖なモノです。スケジュールというくだらない大人の都合を、崇高な精神で跳ね返すクリエイターの矜恃(矜持ではない)が雄弁に描かれています。

まさに「創作にドラマあり」です。

なお、このツイートに、私は余分な一文を混ぜ込ませていました。

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我ながら、嫌味な人間ですね。根性がねじ曲がっていると思います。

当然、これはあくまで私の主観であり、オリジナルシナリオよりも遥かに面白くなったと思っている人もいます。そうでない人もいます。どうでもいい人もいます。ですがそれらは、すべからく尊い価値観です。

さて、長々と私の駄文に付き合っていただき、ありがとうございました。そして、ウソをついてしまいごめんなさい。今までのドラマは、自分しか知らないドラマではなく、人によって見え方が変わるドラマです。
つまりは、「多様性」のドラマです。

さて、ここからは、自分しか知らないことを書こうと思います。


『ときめきメモリアル Girl's Side』にドラマあり。(2回目)

『ときめきメモリアル Girl's Side』の最新作が近日発売されるようです。楽しみです。

このゲームは、ギャルゲーの金字塔と呼ばれている『ときめきメモリアル』のスピンアウト作品です。

『ときめきメモリアル』と『ときめきメモリアル Girl's Side』は、ぱっと見ほとんど同じゲームです。

ですが、実は、開発序盤は結構変わる予定でした。

理由は「男性と女性は性別が違うから」です。

ですが結局のところ、紆余曲折を経て、『ときめきメモリアル』と『ときめきメモリアル Girl's Side』は、ぱっと見ほとんど同じゲームになりました。

理由は、『ときめきメモリアル』がとてつもなく面白いゲームなので、下手にゲームシステムをこねくり回すと、かえって面白く無くなってしまうという英断が、様々な陰謀詭計と複雑に絡み合いながら可決されたからです。

「面白さに性別は関係ない」のです。

ごめんなさい。私はまたウソをついてしまいました。この話は、私以外に、結構知っている人がいます。

今度こそ、自分しか知らないドラマを書こうと思います。



『ときめきメモリアル Girl's Side』にドラマあり。(3回目)

『ときめきメモリアル Girl's Side』の最新作が近日発売されるようです。楽しみです。

このゲームは、ギャルゲーの金字塔と呼ばれている『ときめきメモリアル』のスピンアウト作品です。

『ときめきメモリアル』と『ときめきメモリアル Girl's Side』は、ぱっと見ほとんど同じゲームです。

ですが、実はゲーム内のパラメータ名が結構異なります。

具体的には、

ときめきメモリアル
体調 ストレス 文系 理系 芸術 運動 雑学 容姿 根性
ときめきメモリアル Girl's Side
ストレス リッチ度 学力 芸術 運動 流行 容姿 気配り 

と、実は共通パラメーターの方が少なかったりします。

理由は「男性と女性は性別が違うから」です。

Girl's Sideで「体調」がないのは、「体調」という言葉が少々センシティブだったからです。「理系」と「文系」が「学力」に統合されたのは、当時、「リケジョ」という単語が一般的ではなかったからです。(女性=文系もしくは商業系という価値観が現在よりも遥かに強かった時代でした)
そして、Girl's Sideには「リッチ度」という概念が入るため、全体的にパラメーターの簡略化がなされたという理由もあります。

「雑学」が「流行」なのは『ときめきメモリアル』に登場する、20世紀のいまどき女子高生、朝日奈夕子さんが「雑学」好きな少女ではなく「流行」大好き少女だったからです。

「容姿」が「魅力」なのは、少女漫画の主人公が「容姿」で褒められることがほとんどない代わりに、大抵「魅力」にあふれている女の子だったからです。

これらのパラメーター名称は、私が決めた(厳密にはクライアントの了承を得て変更した)のですが、唯一「リッチ度」だけは、私以外の人物が決定した単語です。

「リッチ度」は、最初は「¥(円)」というパラメーターでした。
ですが、ある人物(Wikiに載ってる人ではありません)の指摘を受けて名称の変更が行われました。

「ときめきメモリアルは、もっとお間抜けというか『クスッと笑える世界観のゲーム』だと思うんですよ。
 リアルなお金だと、ちょと賢すぎる感じがして・・・なんだか・・・こう『リッチ度』みたいな・・・何か馬鹿っぽい、おふざけな感じ?」

このアイデアは、まさに英断でした。このおふざけパラメータは、ゲームに不必要なリアリティを、全て吹き飛ばすミラクルアイデアでした。

私は『ときめきメモリアル Girl's Side』というゲームの骨格は、まさに、この瞬間に象られたと思っています。間違いなく『ときめきメモリアル Girl's Side』というゲームにおけるMVPクリエイターだと思います。(Wikiに載ってませんが)

ごめんなさい。私は、またまたウソをついてしまいました。これは『ときめきメモリアル Girl's Side』のMVPクリエイターの創作の瞬間を描いたドラマです。

「創作にドラマあり」というお題に最もふさわしい、コンテンツの誕生の瞬間を切り取った、これ以上ない素晴らしいエピソードだと思うのですが、私はうっかり冒頭で、自分しか知らないドラマを書くと言ってしまいました。

ぶっちゃけ、もう終わってもいいような気がしますが、今度こそ、本当に自分しか知らないドラマを書こうと思います。


『ときめきメモリアル Girl's Side』とドラマあり。(4回目)

『ときめきメモリアル Girl's Side』の最新作が近日発売されるようです。楽しみです。
このゲームは、ギャルゲーの金字塔と呼ばれている『ときめきメモリアル』のスピンアウト作品です。

先ほどから、『ときめきメモリアル』と『ときめきメモリアル Girl's Side』のパラメーターの違いをお話ししていましたが、ひとつ、説明を忘れていたパラメーターがあります。

こちらのパラメーターです。

ときめきメモリアル
根性
ときめきメモリアル Girl's Side
気配り 

この「気配り」というパラメーターなのですが、最初期は「精神」というパラメーターでした。

このパラメーターを「気配り」に変えたのは私です。そして、その理由は私しか知りません。

この「精神」というパラメータ名は、版元ディレクターさん(Wikiに載ってる人ではありません)が命名したモノなのですが、私はしっくりきていませんでした。

私は「精神」の鍛え方を知らなかったからです。

座禅でしょうか? それともヨガでしょうか。

座禅をする女子高生はシュールすぎますし、今でこそヨガは女性が一般的に行うエクササイズですが、当時ヨガと言えば、炎を吐いたり手や足を伸ばす格闘技でした。

版元ディレクターさん(Wikiに載ってる人ではありません)になぜ根性ではダメなのか確認したところ「女性は根性という言葉が好きではない」との回答がありました。

つまりは、

「ときめきメモリアル」に登場する20世紀のいまどき女子高生、朝比奈夕子さんが「雑学」ではなく「流行」に敏感だったように、

「ときめきメモリアル」に登場する「根性」が口癖の虹野沙希さんは、「根性」ではなく「ほかの何か」が得意なキャラクターだということです。

では、虹野さんは何が得意なのでしょうか?
・・・おそらく「料理」だと思います。

ただ、ハッキリ言ってしまうと、虹野さんの料理が作ってくれた美味しいお弁当より、主人公の親友の早乙女好雄の妹、優美ちゃんの方が作ってくれた、体調に異状をきたすお弁当の方が断然好きです。私にとっては、ご褒美以外のなにものでもありません。

そして、白状してしまうと、私は、虹野さんがあまり好きではありません。ハッキリ言って苦手です。

理由は、この記事に無駄に長くまとめられているのですが、

かいつまんで話すと、虹野さんには根性がないからです。
私は、自分は根性がないのに、好きな男性には根性を要求する虹野さんが怖くて仕方がないのです。

ですが、虹野さんはギャルゲーの金字塔『ときめきメモリアル』における、No.1人気キャラです。圧倒的な人気キャラです。
ひねくれモノの私意外に、虹野さんが苦手という人を見たことがありません。

なぜだか分かりませんが、みんな、虹野さんに応援されるとメロメロになります。喜んで、虹野さんに根性を差し出します。

「根性」と「応援」という、謎の等価交換が行われます。

ですので、もし、虹野さんというキャラクターの本質を突き止める事ができれば、イケメン(当時はこんな言葉ギリなかった気がする)をメロメロにできるパラメーターが作れるのではないかと思いました。

私は『ときめきメモリアル』では、絶対に運動部には入らないので、うっかり忘れていたのですが、彼女は、野球部orサッカー部のマネージャーでした。つまり、彼女の得意分野は「マネージャー業務」でした。

マネージャー業務に一番必要な能力は何なのか・・・考えた末、私が導き出したパラメーター名は「気配り」でした。

「気配り」・・・しっくりします。虹野さんのお弁当も、優美ちゃんのお弁当もちゃんと「気配り」です。違和感は文字数くらいです。

「気配」にしようとも考えたのですが、これでは座禅をする必要がありますので、止むを得ず「気配り」になりました。

結果、「気配り」というパラメータを上昇させる仕組みを用意する必要性が生じたため、アルバイトや、友達と遊ぶコマンドが、パラメーター上昇機能として組み込まれた記憶があります。アルバイトや友達と遊ぶコマンドは、パラメーターの育成効率があまり良くないのですが、代わりに「気配り」のパラメーターが上昇するように設計されています。
(「勉強」「運動」「芸術」「流行」コマンドは、育成効率が良いのですが反面、「気配り」が下がります。)(*2)

完全に偶然の産物なのですが、友達キャラクターにシステム的な意味づけが為されたのは良い相乗効果になっているような気がします。

また、攻略キャラクターの参照パラメーターに全て「気配り」が組み込まれているのですが、これは、少女漫画の主人公が、みんな好きな男の子に「気配り」をしていたからです。(*2)

(*1:*2)
私は、最終的パラメータの調整関わっておりませんので、最終仕様ではありません。一応確認もしましたが、詳細な仕様が変更があったかもです。

今にして思えば、この多様性の時代「気配り」は最も重要なパラメーターのひとつではないかと思います。しかしこれは、単なる偶然です。

私は単に「根性」の代替えパラメーター名を考えたかったのではなく、『ときめきメモリアル』で、自分が一番好きだった優美ちゃんを表現できるパラメーター名を考えたかっただけなのです。

私は、『ときめきメモリアル』では、不人気キャラとして冷遇されている優美ちゃんでもヒロインになれる世界を作り方たかっただけなのです。
わがままな妹キャラクターの優美ちゃんが、実は主人公にとんでもなく「気配り」をしていたことを、伝説の樹の下で彼女と話した人ならご理解いただけると思います。そう。つまるところ、

「気配り」は、私の「エゴ」が生み出した、気配りとはほど遠い理由で誕生したパラメーターだったのです。


最後に・・・創作のドラマを造るのは誰か?

・・・結局のところ、私だけが知る『ときめきメモリアル Girl's Side』の創作ドラマは、「気配り」の誕生秘話だけでした。

私は、プロジェクトから中座した人間なので、これくないしか知らないのは止むを得ない・・・と思ったのですが、もし、最後まで開発に携わっていても、結果はあまり変わらなかったと思います。

なぜなら、創作は決して一人ではできないからです。

これは、ゲームという、比較的大規模なチームが必要なコンテンツだからではありません。

一見、個人活動と思われる創作においても、クリエイターさんの制作秘話を実際に聞いてみたり、インタビュー記事や映像を拝見すると、必ずその人の後ろに、沢山の人物が透けて見えてきます。そして、それらの人物の存在こそ、偉大なクリエイターさんを偉大に象っているのだと思います。

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かなたろー
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