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逆輸入!?


ポストクロッシングをしていると、
今まで気づかなかった日本の良さに気づかされることがある。


昨年の12月、私はポストカードの展示を行った。
海外から届いたカードを手に取る楽しさを他の人にも知ってもらいたくて行ったイベントだ。



このイベントの際にポストクロッシングの掲示板を通じて、海外のポストクロッサーさんにポストカードの送付を依頼したのだけれど、アメリカから何とも不思議なカードが届いた。


それは日本の「浮世絵」のカードだった。


私はアメリカから浮世絵のカードが届いたことが不思議でたまらなかった。
どうしてアメリカに浮世絵のカードがあるのか、という問題以前に、もし私がアメリカ人ならわざわざ日本人に浮世絵を送ろうとは思わないからだ。


言わずもがな、日本は浮世絵が生まれた国だ。
別に海外から浮世絵のポストカードを受け取らなくても、文房具屋さんに行けば浮世絵のポストカードなんてそこら中にある。


そういう考えを持っている私は、オランダ人ポストクロッサーにゴッホのポストカードを送ろうとは思わないし、アメリカ人にLoupaperを送ろうとは思わない。だって私がわざわざ送らなくても、それらは彼らにとってありふれた存在だからだ。


だからこそ、アメリカ人の彼女が私に浮世絵を送った理由がとても気になった。
だけれど素朴な疑問の答えは、彼女からのメッセージの最初の方に書いてあった。


「世界中の人々が日本人や日本の文化を愛しているのを伝えるために、浮世絵のカードを送ります。」



目から鱗だった。
相手の国の素晴らしさを伝えるために、あえてその国に関するカードを送るだなんて私には考えつかなかった。



しかも彼女が言っていることも大げさなことではなかったのだ。
不思議なことに私は彼女からカードを受け取ってから、プロフィールのwish listに「Ukiyoe」と書いている海外のポストクロッサーを頻繁に見かけるようになった。


とはいえ、私は浮世絵にそこまで興味があるわけではなかった。
葛飾北斎、歌川広重、東洲斎写楽くらいは日本史の授業でも取り上げられていたので名前は知っているが、誰が何を描いたかなんてさっぱりわからない。
それに彼らの絵を見たって何がいいのかさっぱりわからなかった。


それよりも私はフィンランドやスウェーデンのカラフルで独特なデザインや、ポルトガルのタイル模様に心惹かれていた。


それでも、私は浮世絵のポストカードを何枚かストックしていた。何度も言うが決して浮世絵が好きだったわけではない。浮世絵のポストカードを持っておくのは日本人ポストクロッサーとしての義務のような気がしただけだ。



だけれど不思議なことに、
購入した浮世絵のポストカードを見ていると…
それらがだんだん魅力的に見えてきたのだ。


カラフルな色使い、計算された構図、日本のアニメや漫画の原点は浮世絵なのではないのかと思うくらい緻密に描き込まれた街の風景や人物の表情…



私は気がつかないうちに浮世絵が好きになっていた。
偶然バスの車内で「北斎と広重展」の広告を見かけたその足で大分県立美術館に向かい、夢中で展示を見つめ、ミュージアムショップで浮世絵のポストカードを買い漁り、さらには来場者プレゼントの「赤富士」のポストカードをわざわざもらいに行くレベルまで好きになっていた。

今月金欠じゃなかったら間違いなく図録も買っていただろう。


「我が国の芸術である浮世絵の良さを外国人に言われて気づくなんて、日本人として恥ずかしくないのか!」とお叱りの声が飛んできそうだが、案外そんなものである。

自分の身の回りに溢れた、いわゆる「あって当たり前」のものの魅力に気づくのは意外と難しいものだ。


ポストクロッシングを始めてから気づいた日本の良さはまだまだある。
例えば、日本の郵便局の仕事の素晴らしさだ。


私は「手紙が届かない」なんてことがあるのを、ポストクロッシングを始めてから知った。
今まで送った郵便物が誤配されたとか、紛失されたとかそういった目にあったことが一度もなかったからだ。


それに仕事のクオリティも高い。
あるアメリカ人ポストクロッサーとカードの交換をした時、こんなメッセージが来た。


「あなたに少し薄いカードを送りました。以前スイスやアメリカ国内にこれと同じシリーズのカードを送った時、折れ曲がったり破れたりひどい状態で届きました。カードを受け取ったら、私にカードの状態を教えて下さい。もし破れたりしていたら、新しいものを送ります。」


しかし、彼女のカードはとてもいい状態で私の所に届いた。折れている箇所は1箇所もないし、ましてや破れたりなんてしていない。
私はカードの写真を彼女に送ると、彼女は安心してとても喜んでくれた。

彼女が送ってくれたカード。多少汚れはあるものの許容範囲だ。右側のオレンジ色のバーコードはアメリカからのカードには必ずついている。これが何なのかは未だにわからない。


以前の話でも登場した、韓国に誤配されてひどくダメージを負った封筒に対しての仕事も感動ものだった。


これ以上ダメージを負わないようにビニールで包み、自分たちは悪くないのに「このような状態でお届けすることをお詫び申し上げます」とメッセージを添えて配達してくれたのだ。


これらはポストクロッシングをしていなければ、
一生気が付くことがなかった日本の良さである。



ポストクロッシングは見ず知らずの国の興味深い事実をたくさん教えてくれる。
それと同時に、自国の素晴らしい所にも気づかせてくれる。



海外も素晴らしい、でも日本も素晴らしい。
そんな風に思わせてくれる素晴らしい趣味だ。

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