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警官が制服姿で店舗を利用する話

警官や消防士、自衛隊員が制服姿でコンビニに入ったり食料を買うのに店舗を利用したりするのが気に入らない人がいるらしい。なぜだろう?

4月にボストンに行った時、日中宿泊先近くの飲食店前に大きな消防自動車が止まった。サイレンを鳴らすでもなく静かに停車した緊急車両から消防服ではないが明らかに消防士の制服をきた人が数人降りてきて パラパラとその店に入って行った。ボストンにきたばかりだったので、「え?なにが起きたの?ガス漏れ?」と不審に思った。消防車は大きいので遠くからでもサイレンを鳴らさなくても目立つのに、いつも静かに訪れて制服の人がお店に入って行ってなにをしているんだろうと思った。気にしていると消防車だけでなくパトカーもよく停まっていた。消防車が止まるのと同じ位置に、サイレンをならさず、静かに。

みんな制服姿で静かに訪れて、なにをしているんだろう?気になってその店に入ってみた。学校や会社のカフェテリアのようにカウンターがあって、お客はカウンター越しにガラスケースの中にある食べ物を店員に頼んで仕切りのついたお弁当容器に入れてもらい最後にレジで会計をする、そんなお店だった。お客は店内のテーブルで食べてもよし、持って帰ってもよし。近所のオフィスワーカーや学生に混じって制服のお巡りさんや消防士さんが「今日はなににしようかな?」とショーケースを見ながらにこやかに楽しそうにしていた。制服組は自分の好きなものを詰めてもらったランチボックスを持って 店前に停車していた緊急車両に乗って去っていった。店の近くのビル陰に止めたパトカーのドアを開けて2人で話しながらお店のラップサンドに齧り付いている警官も見た。この光景は日本だったら「張り込み中?」と警戒されるのだろうか。いや、それはちょっと刑事ドラマの見過ぎか。Twitterでこの話を書いたら、防犯効果があるから制服来店割引になるらしい と教えてくれた人がいた。

何年も前に住んでいたサンパウロのことを思い出した。住宅街にある小さなパン屋さん、いろんな種類のパンと焼き菓子 頼むとその場で焼いたお肉とかソーセジをパンに挟んでくれて即席ハンバーガーやホットドッグを作ってくれる。飲み物もコーラやジュース コーヒーなどが頼める、立ち食いでよければ高い小さなテーブルがいくつか置いてある。そんなありふれたどこにでもある地域のパン屋さんは いつ行っても警官がいた。お店のお客として出来立て熱々のハンバーガーを食べていたりコーヒーと甘いお菓子をとっていたりとそれぞれだ。長く住んでいる人に話を聞くと、この店では制服の警官はいつ来てもなにを頼んでもタダということだ。この店には過去に何度も強盗に入られ、ほとほと困った店の主人が決断したらしい。貧富の差が激しくピストルはスポーツ店で安価に入手可能となると オープンな店構えのこの店舗などは強盗に入られ放題だったのではないか。制服の警官は飲食無料、ということにすればいつ行っても警官のいる可能性が高く 強盗にとってはなかなかに押し入りにくい。店としても 中途半端にガードマンを雇うよりずっと安心感がありコスト的にも見合うのだろう。お客としても警官がいれば、巻き込まれても死ぬことはないだろうと思える。地域にとっても店に来るためパトカーが常時うろついてくれているのは パトロールと同じ状態でウエルカムだ。

制服を着てコンビニに入る、制服を着てソフトクリームを食べている、そんなことを非難する書き込みがあったらしい。制服を着ている人は通常の生活を送ってはいけないのだろうか。コンビニに行く時は私服にきがえないといけないのだろうか。日本って平和なんだなーと思った。そんなことに目くじらたてるなんて。

公務員は接待されてはいけない規則があるのだろうから、日本では飲食無料や割引サービスは難しくても 制服の人が立ち寄ってもいいサービスは考えられないだろうか。制服の人たちは地域の安心安全や日本の防衛をになってくれているありがたい存在なのに 制服を着ているがために些細なことをあげつらわれて気の毒としか言いようがない。日本の治安がもっと悪かったら大事にされているのかもしれないが、一般の私たちの制服を着ている人たちへの理解をもっと深めていくのが大切かもしれない。ボストンのあのお店を思い出す。みんなにこやかで楽しそうだった。地域の人たちもごく普通に受け入れている。「また今日も会いましたね!」と。

今日も暑い中警戒に立っているお巡りさんに せめて ありがとうございます、いつもご苦労様です と声をかけよう。ささやかもしれないが、自分の力で変えていけることから変えようと思った。




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