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〝切なさ〟で自分を⚪︎すのが夢でした。

17歳。
国道沿いを一緒に歩いて帰った日。
別れ道で見せた横顔に、
好きと思ってしまった瞬間。

もう全部どうでも良くなって、
帰りの電車も乗り過ごして、
終点駅で雪の上に寝そべって、
静寂の音を聞いた大晦日の夜。



地元。
ガムシャラに生きた街
恋に恋してときめいた街
涙と共に別れを告げた街
バカな時期にきちんと
バカであれた街。

汗をかいて、
シャワーを浴びた街。

悔し涙と寂し涙と、
多分いつか流した嬉し涙と。

夢っぽい何かを、
友っぽい誰かと、
語り合った
地元の祭り
流星群の下。

あの頃、
私の世界の全てだった場所。

〝懐かしい〟と言う感覚が、
心に宿っていると確信できて
その事が何故だか妙に嬉しかった。
初めての帰省にて。


大嫌いだった先生。
嫌いになれなかった音楽の授業。

講義をサボって通った喫茶店。
「人間失格」を鞄に忍ばせて。

4月、ギターを肩に懸けて立つ。
野外ステージの上
初恋の風の匂いと暖かさ。
届けと叫び、
掻き鳴らす3コード。

新しい街で見た
新しい景色
新しい暮らし
新しい出逢い
その中でただ一つ
変わらなかった「私」と言う存在。


初めてキスした夏の夜と
目を閉じた事の後悔と。

泣きながら受話器を握りしめて、
ただただ追い縋った惨めな9月。

切ない以外の感情を
私から全て奪い去って行った人。

自転車に乗って抜けた奥羽山脈。
土砂降りの下で野宿した雨季の日。

世界が思っていたよりずっと、
不安定で頼りない場所と
知ってしまったあの日。

「大人になる」とか
「大人になれない」とか。
本当はそんなこと
なんだって良くて。


多分もう、
何十万人が真夜中に綴った
垢に塗れた感情と、

何百万人が朝方に抱いた
繰り返される言葉達。

それでもやっぱり、
私が綴らなくては
ならなかった言葉。

あなたが抱かざるを
得なかった感情。

これまでも、これからも。

今この瞬間にしか、
彼らは胸の中に居てくれないから。

そんなことを
時々ふと、
考えてしまう。

上京して今。
帰りの満員電車の中で。

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