不倫相手に対し財産を渡す旨記載した遺言の有効性
取り上げた判例
最判S61.11.20民集40巻7号1167頁事案の概要
亡Aとその妻X1間の夫婦関係は、昭和40年ころから、別々に生活する等、その交流は希薄となり、夫婦としての実体はある程度喪失していた。
亡Aは、妻X1がいたにもかかわらず、Yとの間で、遅くとも昭和44年頃から死亡時まで、約7年間、いわば半同棲のような形で不倫な関係を継続した。
昭和46年1月ころ、亡Aは、Yとの関係を一時清算しようとする動きがあったものの、間もなく両者の関係は復活し、その後も継続して交際した。
本件遺言は、昭和49年8月21日に作成された。遺言の作成前後において、亡AとX1との間の親密度が特段増減したという事情はなかった。
亡Aは、昭和50年10月25日、死亡した。
本件遺言の内容は、妻X1、子X2及びYに対し、全遺産の3分の1ずつを遺贈するものであった。
当時の民法上の妻の法定相続分は3分の1であった。
また、X2は、すでに嫁いで、高校の講師をしていた。
これらの事実関係のもとにおいては、本件遺言は不倫関係の維持継続を目的とするものではなく、もっぱら生計を亡Aに頼っていたYの生活を保全するためにされたものというべきである。
また、当該遺言の内容が相続人らの生活の基盤を脅かすものともいえない。結論
したがって、本件遺言は、民法90条に反さず、有効である。
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