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時間切れ!倫理 161 ルネサンス 文学

 ルネサンスの人物として最初に登場するのがダンテ(1265生)です。作品は『神曲』。物語風の長い詩です。物語の主人公はダンテ自身で、かれが地獄、煉獄、天国を旅する物語です。煉獄というのは、当時考えられていた死後の世界の一つで、地獄と天国の中間にある。めちゃくちゃ悪い人は地獄に行くのですが、そこそこの人は煉獄でしばらく罪を清めてから天国に行ける、そういう場所です。
 この地獄・煉獄・天国を旅する話の、どこがルネサンスか。この物語の中で旅の道案内の人物が出てきます。それが古代ローマの詩人ヴェルギリウスなのです。ヴェルギリウスはキリスト教以前の人で、当然キリスト教徒ではありません。キリスト教徒ではない人の道案内で、地獄から天国へ至る。ローマ=カトリック教会の影響力が薄れていることがわかりますね。
 また、当時の学者たちが使っていたラテン語ではなく、イタリアの方言であるトスカナ語で書きました。俗語とされていた当時の現代語で作品を書くこと自体が、中世的な伝統から外れた行為でしたが、かれはあえてそれをしたのでした。

 ペトラルカ(1304)は『カンツォニエーレ(抒情詩集)』を書きました。近代的恋愛感情を表現したということで、かれはここで恋愛を賛美するわけです。ローマ=カトリック教会の教えでは、恋愛は欲望、快楽のあらわれなのでダメなんです。でもペトラルカは、恋愛いいじゃないかと言っているわけです。
 また彼は近代登山の先駆者といわれています。彼の住んでいるところから山が見える。「山の頂上に登ったらどんな風景が見えるかな」と思ったペトラルカは、弟を誘って二人で山の頂上まで登りました。山のふもとで羊飼いの老人が「無駄なことだからやめろ」と止めるのですが、登る。現在、登山する人が、なぜ山に登るかといえば、 ただ登ってみたいから、ですよね。昔も山に登ることはあったけれども、それは信仰のためであったり、生活のために狩りや採集をするためであったりした。しかし、彼は何の目的もなく、ただの好奇心で、登ってみたいから山に登った。これは近代的な発想です。自由に自分の人生を楽しむ、という発想です。
 ペトラルカは、山の頂上に登ってしばらく本を読んで、いい気持ちだなと言って降りてきた。ただそれだけ。でもそれが歴史的には画期的ということです。

 ボッカチオ(1313生)は『デカメロン(十日物語)』という小説を書きました。物語の設定はペストが流行している時代。お金持ちの人達10人が、ペストが猛威を振るう町から逃れて、山の上の別荘にやってくる。山の中なのでやることが全くない。そこで住人が自分の知っている面白い話を10個ずつする。この話のなかで、ローマ教会の聖職者たちの、金銭や女性関係のスキャンダルが語られる。聖職者批判はルネサンス的です。

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