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辿り着いたカレンデュラクリーム

ハーブを取り入れるようになってから、はや10年以上経った。きっかけは、ダニに刺されたような湿疹ができたことだった。

20代後半。よくある虫刺されと思っていたが赤みが、徐々に激しい痒みへと変わり、体のあちこちに点々と広がるようになった。

急いで市販の塗り薬を買ったが、塗っても状態は変わらず。つらい痒みに危機感を感じ、お世話になるとは思わなかった皮膚科に行くこととなった。


皮膚科医の診断は「ダニですね」だった。効きそうな軟膏を出され、早速塗ってみることにした。

軟膏はよく効き、やがて痒みは治まり、赤みも徐々に引いていった。最終的に、患部は乾燥したようになり、針を刺したような小さな点へと変わっていった。触ると芯のようなものが残っている感じはあったが、掻かないのが一番ということだったので、痒みがないだけでも万々歳だった。

これでひと安心。のはずだったが、何がきっかけか、また同じ箇所が痒くなったり、新たな湿疹も増えていくの繰り返しが続いた。完治ではなかったし、明らかに虫刺されではない自信があった。

このような状態は数年続いた。症状が悪化することはなかったが、落ち着いたと思ったらまたでき、軟膏が無くなったら皮膚科に軟膏をもらいに行く。どんなに清潔にしても着るものに気を付けてもまた湿疹はできる。それでも診断は決まって虫刺され。もう半分、診断なんてどうでも良く、薬さえくれればいい。そんな気持ちになっていた。

そんな状態に終止符を打てたのは、夫との出会いだった。

まだその頃は夫ではないが、お付き合いが始まった頃、夫は私が塗っている軟膏をとても気にしていた。看護師だからだろう。

「時々塗るくらいならいいけど、ずっと塗らない方がいいよ」

夫曰く、どうやら軟膏に含まれているホルモンは、本来自分の体から作られるもので、補いすぎると自分で作らなくなる。だから薬に頼るしかなくなる。というものだった。今は当たり前に知られていることかもしれないが、当時の私は無知だった。

この言葉をきっかけに、私は軟膏以外で治せる方法を考えるようになった。引き寄せなのか、その頃偶然、職場の仲間から漢方を扱う良いクリニックがあると教えてもらった。
漢方か。気持ちが乗った。

クリニックは意外と近くあった。それは良いが、患者数と待ち時間が異常に多くて驚いた。それだけ期待も増したが、まだまだ漢方を処方する病院は少なく、求める人が多いと感じた。今は増えたけど。

診察は丁寧だった。漢方薬を処方してもらったが、結局軟膏はセットのように付いてきた。
漢方薬は、体質改善を目的としたものだった。診察で、アレルギー症状ではないかと言われたからだ。湿疹ができて数年、初めての診断結果だった。

それからというもの、言われた通りに漢方薬を飲み続け、どうしても痒い時は軟膏を塗る日々が続いた。ハッキリとは覚えていないが、以前よりは湿疹が出にくくなっていたと思う。だが、季節の変わり目や汗をかくと時々痒みが出て、見ると赤くなっている。やはり軟膏は手放せなかった。長丁場。

そんな状態を続けながら、私は軟膏の代わりになるものをネットで探すようになっていた。できるだけ体に負担のないものを塗りたかったからだ。

最初に目に留まったのは、精油(エッセンシャルオイル)が含まれた虫刺されクリームだった。ユーカリという精油で、虫除け、虫刺されに良いとのことだった。ティートリーも入っていたかな。虫刺されではない気はしたが、痒みがなくなれば良いと思い、早速購入して塗ってみた。

残念ながら大して変わらず。かえって刺激があり痒く感じた。それでも心が折れなかったのは、絶対に見つけるという執念があったからだろう。動かされるとは、こういうことかもしれない。


次に見つけたのは、「カレンデュラ」というハーブのエキスが含まれた「カレンドラクリーム」だった。オロナインのような万能軟膏で、レビューでは、幅広い皮膚トラブルに喜びの声が挙がっていた。前回のこともあり半信半疑だったが、ここまで来たら試す以外選択肢はなかった。

早速手にしたカレンドラクリームは、油分多めのハンドクリームのようなものだった。何より、成分の数が少なく、怪しい感じの名前(文字の印象として)がないのが良かった。

いざ塗ってみると、ジワジワと浸透している感覚があった。直ぐに痒みは消えなかったが、しばらくすると痒みは落ち着いた。赤みが消えることはなかったが、痒みが落ち着くだけでも有難い。継続してみることにした。

クリームは、お風呂上がりや痒いと思った時、新たに湿疹ができた時に塗っていた。途中で気づいたのだが、いつの間か、あるはずだった湿疹が少しずつ減っていた。何より驚いたのは、痕跡すら消えていき、元の肌に戻っていたことだった。今までになかった変化に、喜びと安堵で心が満たされた瞬間だった。

いつだったか、皮膚科の先生に尋ねたことがある。「ハーブの軟膏って、どうなんですかね」 と。先生は、「そういうのは全然ダメ」と言っていた。

とても悲しい気持ちになった思い出したくない光景。先生の後ろにあるカーテンが西日に染まり、先生が黒い壁によう見えた。それくらい、鮮明に覚えている。

今となっては試してみたのか、是非伺いたいところだ。時代は進んでいる。


現在私は、日常的にハーブを取り入れている。主にハーブティーだが、カレンドラクリームのお陰で、メディカルハーブという存在を知り、色々勉強した結果だ。何より大きな収穫だったのは、ハーブを通して解剖生理の知識が増え、人間の適応力、生きようする回復力を知れたことだった。

皮膚トラブルが起きてからもう何年も経つが、10年近く皮膚科のお世話になっていない。漢方も飲んでいないが、湿疹は大して出ず、カレンドラクリームを買わなくて済む時期も増えた。

最近、カレンドラクリームが廃盤になっていることを知った。殆ど使わないが、トラブルがあった時に無いと困る。とりあえず販売されている分は買ったが、念のため、自分でも作ってみることにした。

手作りのカレンデュラクリームは、カレンデュラとジャーマンカモミールの浸出油を作り、ミツロウで固めたシンプルなもの。カモミールを入れたのは、鎮静作用と炎症を和らげる消炎作用があるから。

カレンデュラは、皮膚粘膜を修復する作用があり、創傷治癒作用もある。ミツロウは、殺菌や外部からの保護として使え、これだけも良かったが、相乗効果を期待してカモミールを選んだ。
カモミールの香りがほのかに漂う、使いやすい軟膏になった。

先日、日焼け止めが肌に合わず、真っ赤に肌荒れしたのだが、この軟膏を塗ったら治ってきた。代用として使えそうだ。


kanako


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