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レイシャル・ハラスメントの理解と対応

本原稿は、『産業カウンセリング』に掲載されたものです。産業カウンセラー協会会員向け記事のため、一部をメンバーシップ限定公開とさせていただきます。

引用の際は下記をご利用ください。
津野香奈美.レイシャル・ハラスメントの理解と対応.産業カウンセリング.2022.※ページ番号後日確認予定


ーレイシャルハラスメントの定義は?

津野:レイシャルハラスメントとは、「人種的マイノリティであることを理由にした差別的言動、差別的取り扱い」というものが研究等で一般的に使われていますが、国による正式な定義というのはありません。

日本では2016年にヘイトスピーチ解消法が施行されていますが、レイシャルハラスメントの中でも精神的な暴力については、この中に書かれている「社会から排除する言動」、「脅迫的な言動」、「侮辱的な言葉」の3つに該当すると言っていいのではないかと思います。

ただし上記の精神的な暴力以外にもレイシャルハラスメントにあたるものがあり、たとえば外国人であることを理由にして採用を拒否したりする差別的取り扱いなども含まれます。

こうした問題はハラスメントというよりは差別なので、国によっては差別禁止法で規定されていて、特に職場で行われる差別行為は違法になることが多いです。しかし日本ではまだ差別禁止法がありませんし、ハラスメント行為自体も禁止されていません。ハラスメントについては民法の不法行為として責任が問われ、それを基に賠償請求がされています。

ただ、パワーハラスメント(パワハラ)についても、定義がなかったときは相談にもいけず、そういうものだと受け入れるしかなかったものが、定義ができてパワハラ防止措置が企業にも義務付けられたことにより、社会的にも無くしていこうという機運が高まっています。同様にレイシャルハラスメントについても、正式な定義と共にやってはいけないことだと周知され、研究によって深刻な健康被害が起こっていることがあきらかになれば、なくしていくための取り組みが必要だと認識されるのではないでしょうか。

ー実態についてはいかがでしょうか。

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