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日本ではZ世代の10~20代の方が男尊女卑的な性別役割分担意識を持っている

日本においては、実は若年層の方が古風な/保守的な性別役割認識や男尊女卑思考を持っているということがわかっています。

内閣府の調査「令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」によれば、特に20代の男性が、職場での役割に関して、性別役割分担意識を強く持っていること、男性優位/男尊女卑的思考を持っていることがわかっています。

職場の役割分担に関する項目のうち、「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ」「女性社員の昇格や管理職への登用のための教育・訓練は必要ない」「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」「営業職は男性の仕事だ」「男性は出産休暇/育児休業を取るべきでない」「仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い」について、女性よりも男性の方が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」傾向が強く、かつ、男性の中でも年代が低いほど「そう思う」「どちらかといえばそう思う」傾向があったです。

令和5年版男女共同参画白書 p.49

女性においても、若い世代の方が保守的な性別役割分担意識を持っている傾向にあることがわかっています。例えば、「職場では、女性は男性のサポートにまわるべきだ」「同程度の実力なら、まず男性から昇進させたり管理職に登用するものだ」「営業職は男性の仕事だ」という質問に「そう思う/どちらかと言えばそう思う」と回答した女性の割合を年代別にみると、最も高いのが「20代」です。

巷で「Z世代は(他の年代と比べて)男女平等思想を持っている」という意見を聞くことがありますが、実はそうではなく、逆の結果であることがわかっているのです。もちろん、全ての年代において、男尊女卑思考を持つ人の割合より、男女平等思考を持つ人の割合が高いことは間違いありません。

20代の方が他の年代と比べて保守的な性別役割分担意識を持っているというのは、他の調査でも明らかになっています。例えば、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という性別役割分担意識についても、「賛成/どちらかといえば賛成」と回答した女性の割合を年代別にみると、50代(27.1%)、60代(26.3%)よりも18~29歳(29.0%)の方が高いという結果が得られています(内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」令和元(2019)年)。男性では20代よりも40代・50第・60代・70歳以上の方がより多く「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」と回答しているものの、30代よりも20代の方が賛成割合が高い、つまり若者の方が保守的思考を持っていることがわかっています。

令和4年版男女共同参画白書 p.136

それどころか、むしろ女性の方が男尊女卑的思考を持っているという調査結果もあります。女性の中にも、意識的あるいは無意識的に女性を下にみる気持ちがあったり、弱さをアピールポイントとして異性に媚びたりする者も少なくないことが指摘されており、そのような女性を「男尊女子」と呼んでいる人もいます。


18歳以上の日本人男女を対象に、女性には「男性と接する際、無知・無教養を装うことがある」など、男性には「自分よりも学歴の高い女性には近づきがたい」など、8項目からなる質問への肯定反応によって回答者自身の男尊女卑的態度を調査した研究があります(高馬、2023)。調査には、305名(未婚男性59名、未婚女性140名、既婚男性72名、既婚女性27 名)が参加しました。

その結果、自分自身が男尊女卑的な態度をとる人は未婚男女では8%、既婚男女では4%存在し、未婚者、つまり若い世代の方が男尊女卑的態度を取っていることがわかりました。また、未婚者の場合、女性の方が男性よりも男尊女卑的な態度の質問に「あてはまる」と回答した項目数が多かった、つまり女性の方が男尊女卑的である可能性が示唆されました。

なぜ女性の方が男尊女卑的態度を取っているのかは十分に考察されているわけではありませんが、社会的な性役割の圧力による影響が大きいと考えられています。例えば、女性の方が学歴が高かったり教養があったり社会的地位が高いとモテないという社会では、モテるために男性の前では無知を装おうという動機を強めるからです。

例えば、男性にモテるテクニックとして「さしすせそ」はあまりに有名です。

「さしすせそ」とは
「さ」:
「さすがですね!」
「し」:「知らなかった!」
「す」:「すごい!」
「せ」:「センスいい!」
「そ」:「そうなんですか!」
という言葉を使って男性を褒めることを意味します。

女性の方が、男性よりも「性別に基づく役割を直接言われた、あるいは言動や態度で間接的に接した経験が多い」こともわかっています。日常的にこのような経験をすることから、社会的な期待を感じ、それにあわせてふるまってしまう女性が多いと考えられます。

一方、「男性は女性と比較して、性別に基づく役割を直接言われた、あるいは言動や態度で間接的に接した「経験」は少なく、伝統的な役割観に自身が捉われていることに気付いていない可能性がある」ことも指摘されています(令和5年版男女共同参画白書 p.48)。男性の場合は女性と比べ、外的な圧力よりも自分自身が正しいと思い込む性別役割分担意識に沿って行動している傾向にあると言えそうです。

社会情勢としては国レベルで長時間労働の是正や男性育休の取得などによる男性の家庭進出の奨励が進んでいるのにも関わらず、男性側の意識が変わっていない状況が示唆されています。

令和5年版男女共同参画白書 p. 50


前述の調査研究(高馬、2023)では、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成する人と賛成しない人で、男尊女卑的な態度を測定する質問項目の肯定数を比較したところ、選択的夫婦別姓制度の導入に賛成しない(反対である)人の方が肯定数が多く、より男尊女卑的であることもわかっています。

ただし、「結婚後、姓を変えるのは男性よりも女性のほうが良い」という項目については、全体でみれば肯定する人の割合が比較的高く、40代以上の人では44%、20代以下の人では24%の人が肯定していたという結果でした。

このような性別役割分担意識は、ハラスメント行為にも繋がる恐れがあります。例えば、「男性は育児より仕事を優先すべきだ」と考える上司が、育児休業を取得したいと申し出た男性部下に対し嫌がらせ(パタニティハラスメント)を行ってしまったり、逆に女性部下に対しては「どうせ育児で仕事を離れるのだから重要なプロジェクトから外そう」と女性差別的言動やマタニティハラスメントを行ってしまったり「男性なら残業や休日出勤するのは当たり前だ」と考える上司が男性部下にパワーハラスメントをしてしまったりするからです。

令和5年版男女共同参画白書にも、「周囲に性別役割分担意識を押し付けるような言動を取ってしまうと、価値観の問題では済まず、職場でのハラスメントにもつながるとの認識を持つ事が必要である」(p. 48)と記載があります。

性別役割分担意識の押し付けは、誰も幸せにしません。男性に仕事、女性に家事育児介護を押し付ける「昭和モデル」ではなく、男女関係なく働きたいように働き健康に生きることのできる「令和モデル」への転換が求められています。

令和5年版男女共同参画白書 p.111



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