職場のパワハラ被害をなくすための対処法
本記事は、『労政時報』用に執筆した原稿「職場のパワハラ被害をなくすための対処法 パワハラ加害者の特徴を踏まえて検討する、実効性の高いパワハラ防止策」の元原稿を特別に公開するものです。引用の際には、下記の書誌情報をご利用下さい。
津野香奈美.職場のパワハラ被害をなくすための対処法 パワハラ加害者の特徴を踏まえて検討する、実効性の高いパワハラ防止策.労政時報.2024; 4080: 70-78.
1.はじめに
2020年に施行された改正労働施策総合推進法により、パワハラは「職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題」と表現され、「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすもの」と定義されている。また、この改正労働施策総合推進法において、大企業には2020年から、中小企業には2022年から、職場のパワーハラスメント(以下パワハラ)の防止対策が義務付けられた。
具体的には、1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発として①職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、労働者に周知・啓発すること。②行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、労働者に周知・啓発すること、2.相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備として③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。④相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにすること。パワハラが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、パワハラに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること、3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応として⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること。⑥事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。⑦事実関係の確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。⑧再発防止に向けた措置を講ずること、そして4.そのほか併せて講ずべき措置として⑨相談者・行為者等のプライバシー保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知すること。⑩事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度を利用したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること、が定められている。
さて、これらの義務となっているパワハラ防止対策は、果たしてパワハラ発生防止に寄与しているのだろうか。本稿では、まずパワハラ対策の一次予防、二次予防、三次予防策を整理し、いくつか紹介する加害者の特徴に沿った防止対策としてどのようなものが考えられるかを解説する。
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