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【本との出会い20】デトロイト美術館の奇跡


1.原田マハさんと鈴木京香さんの談話

最近、偶然というか、シンクロニシティに分類されるのでしょうけど、鈴木京香さんがよく視界に入ります。

前回は、JRの大人の休日倶楽部で。
その冊子では、神社の特集があり、今、私の神社めぐりのきっかけになったわけです。

今回は、行きつけの書店の文庫本の平積みの中で、表紙帯の鈴木京香さんが目に留まり手にした小説です。

著者の原田マハさんと、鈴木京香さんの対談は内容が俊逸でした。

鈴木さんは、私と年が近く、東北の出身ですので親しみを持っている女優さんです。

とても芸術が好きで、美術館を目的とした旅行にもよく行かれるとか。

お父様が油絵が趣味で、小さいころから画集になじんで育った環境からアートが趣味になったそうです。女優を目指す前は、美大進学を検討するくらいとはすごいですね。

原田さんも、お父様が画集のセールスをしていたため、家に画集が山積みだったそうです。


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2.デトロイト美術館について

デトロイトといえば、教科書にはアメリカの大工業地帯、特に自動車産業で有名な地域です。

この小説の中にも、自動車工場でずっと働いた労働者夫婦の話がでてきます。

その工業地帯に美術館があるというのも、すごく違和感のある話ですが、そのデトロイト美術館っていうのが展示品からしてすごい美術館なんですね。

そこに展示されている「マダム・セザンヌ」という婦人を書いたアートをキーに、この物語は進行します。


3.絵画が友人になるという感覚

第一章「フレッド・ウィル」(妻の思い出)2013年 から物語は始まっていくわけなのですが、この章に出てくるご夫婦がとても微笑ましく、そして切ないです。

妻「ジェシカ」は言います。「(友人たち?)アートのことよ。アートは私の友達。だからデトロイト美術館は、わたしの友達の家なの」。

たくさんの友達の中で、夫のフレッドが一番気に入った友達が、この「マダム・セザンヌ」(表紙の絵)なのです。

「彼女、おまえに似ているね」そう妻に告げるフレッドの言葉が優しすぎて泣けます。

4.地方創生へのヒント

対談の中にもありますが、この物語は、デトロイト市の財政破綻により(市の財産である)美術館が、その展示品が売却されてしまうということに向き合う人々について書かれています。

年金を安定して受け取っていきたい市民は、美術館の売却に意義がない。

ですが、フレッドはじめ、美術館の職員の多く、また管財人もが、「本当にそれでいいのか、アートは誰のものなのか」と苦悩します。

いまは天国にくらす奥さんと、生前、一緒にデトロイト美術館を訪ねてくれたこと。アートはともだち、美術館はともだちの家だと教えてくれたこと、一番気の合う友達が「セザンヌ」であること。コレクションの売却はふるさとの家から友達を追い出すことに等しい。だから絶対にあってはならない。助けたいのです、友を。
あのとき、あなたのまなざし、そしてジーンズのポケットから取り出した1枚の小切手。僕はあのときあなたの寄付が「グランドバーゲン」の原点になったと信じてる。


という、やりとりが出てきます。
物語は、地域の美術館の絵画、芸術の所有は自治体なのか?という投げかけも柱になっていますが。

その絵は、果たしてどのようにここまで渡り歩いてきたのか?
今ある地域の財産なのか?という価値観の確認を突きつけます。

自分の年金、財産という既得権益を守る人間の本能だけではない別の選択肢に挑戦しようとする事例でもあるわけです。

そして、世界中の財団に寄付をなげかけ、莫大な資金を得ることで美術館は守られたわけです。

のちの対談にもでてきますが、鈴木京香さんは、一人で美術館を見るための旅をするんだとか。

ここに、大きな地方創生のカギあるように思えてなりません。

県ごとに美術館が設置されいる日本ってすばらしいらしいですよ。







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