【本との出会い 35】雑誌「世界」3月号の新しい連載
1.ルーツを巡る旅、ヘイトに抗う道「語らなかった父」
在日韓国人だった父、それをしばらくは知らないで育った娘がヘイト、差別について語っていく新連載です。
父との幼い日の思い出と、なにか「感じ取れた」という出来事について、切なく思い出し、ジャーナリストとなった現在の考察で書かれているインパクトのある内容です。
いつも絵本を読んでもらっていた母の代わりに、父にそれをしてもらったとき、ひらがなすらよく読めない父に向かって「日本人じゃないみたい」と言い放った自分を、どう感じたのかとその場面を想像すると、切なくなります。
そして、次号からは「外国人登録原票」によって、筆者が自分のルーツを巡る旅が始まります。
つい先日、Amazonプライムで「グリーンブック」という映画を観ました。
黒人差別を描いた映画です。
ヘイトだから、人種差別という短絡的な考えでは決してありませんが、よい映画でしたので紹介します。
2.沖縄・半世紀の群像
「日本にとって沖縄とはなにか」本土復帰から50年たった今もそれが引き継がれている。と。
この号では、琉球王朝の系譜で復帰後東京で暮らした川平朝清氏のことで沖縄と日本の関係性を語っています。
衝撃的なつづりがあります。
戦後、日本が国際社会に復帰した際、朝日新聞に「朝鮮や、ドイツのように分断されずに日本が戻ったことを喜ぶ」というような内容のコラムがのったのだそうです。沖縄、奄美、小笠原は米国領土だというのに。
それだけ、本土の人には、沖縄が日本であるという意識が少なかったということなのでしょうか。
「日本はあらゆる方法で琉球を利用するが、琉球の人々のために犠牲をはらうことは好まない」と外国人作家の文章を引用しています。
日本人が「朝鮮人」という蔑視をするのと同様に「沖縄人」「琉球人」という分断が行われていたとの記述です。
これは、米軍基地問題に関する政府の対応、世論の在り方と、大きく関係していると。
そして、いまだ、そうことで沖縄の人々のアイデンティティは、あらわれるもので、「琉球に戻る」可能性もあるのではないかと考えているという結びです。
ちょうど、沖縄基地とオミクロンについて、世間も沖縄も何かが噴出しそうな雰囲気が近くにあります。
こういうことが一般的なメディアで取り上げられることが少ないことに怖さを感じます。