〖短編小説〗1月26日は「文化財防火デー」
この短編は562文字、約1分30秒で読めます。あなたの1分半を頂ければ幸いです。
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文化が歩いて、どこかに行くというのは珍しいことらしい。僕が知っている文化は歩いて四満都(しまんと)をさまよっている。
「悲しさ」は世界共通。
「笑い」は文化によって異なる。
こんな名言をこの前、貸本屋で借りた「世界の名珍言集」著:駒込ピペットに書いてあったのを思い出す。そういえば、貸本屋のあのおばーさんは、数十年前からまったく年を取っていないことから、一部で永遠の69歳と呼ばれている。69歳って!と笑い合える同じ文化に果たして僕らはいるのだろうか。
彳亍(てきちょく)を見たのは久しぶりだった。大きさは変わらないはずなのに、前見た時よりも大きくなっている気がするのは気のせいか。相変わらず自由に四満都を歩いているのだから、羨ましい限りだ。確か…昔の言葉でカラクリと言うんだっけな、ああいうの。
彳亍の周りにはいつも数人の保護官が付いている。なんせ今や大変貴重な木材をふんだんに使ってできているのが、彳亍さんだからだ。そりゃ、悪い輩が木をふんだくろうとしたり、壊そうとしたり、この前なんか木が本当に燃えるのか試したいと言って、科学団体が火を着けようとした事件があった。
機械学習により、流動的に細い足を使って歩く彳亍。現存する生物の中には同じ動きをする生物はいないらしい。
我々みんなの文化財は今日も行く。
1月26日は「文化財防火デー」