5月27日は「ドラゴンクエストの日」
おい、あいつ昨日もあの店の前にいなかったか?
本当だ、昨日もいたやつだ。聞いた話じゃ隣の村から来たやつらしいぜ。
「お客さんさ、毎日店の前にいられると、商売の邪魔なのよ」と迷惑そうに店の主は言った。
「あのーそのーちょっと待ってください。今持てる道具がいっぱいになってしまって……」
ごそごそと、手元の袋を見ながら若者は言った。
困った。まさか持てる道具の数が決まっているなんて……いったいどれを捨てればいいんだ。
やくそう……いいやダメだ。このやくそうは村を出るときに転んだり、ニキビができたらこれを使いなさいと持たせてくれた。持たせてくれたおばあちゃんの気持ちを捨てるなんて、とてもできない。
こんぼう……いいやダメだ。このこんぼうは祖父の代から使ってきたこんぼうだ。ある時は父がこれでスライムを追い払ったり、父の趣味がそば打ちだったので、そばを伸ばす棒として使ったりしていた大切なものだ。
ぬののふく……いいやダメだ。母に近くの大きな街にユニクロができたから、そこの服が欲しいといったら、そんなお金はないと言われ、これで我慢しなさいと渡された母の手作りの、ぬののふく。ユニクロとは全然違うけど、このぬののふくを捨てるなんて。
村のみんな、ごめんよ。ぼくは道具の整理もできない勇者です。かっこいい剣や盾や防具は欲しいけど、諦めて次の村に行きます。
のちに勇者となるこの若者は、魔王を退治し平和となった大陸に、物を大事にして、次々と消費しては捨てる文化をやめようと唱えた「ミニマリスト勇者」として有名となった。
5月27日は「ドラゴンクエストの日」
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