〖短編小説〗1月2日は「月ロケットの日」
この短編は682文字、約2分で読めます。あなたの2分を頂ければ幸いです。
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「あれがスプートニク1号です。世界初の人工衛星です。長い間、火星と地球の間を公転していたスプートニク1号ですが、ついに戻ってきました」
そのニュースを見ていたボクは、特になんの感想も抱かなかった。宇宙はもはやゴミ捨て場と化している。地球に人類が住んでいたころは、海にゴミを捨て環境を破壊したと聞くが、宇宙でもしていることは、それほど変わらない。
地球から宇宙へと打ち上げられる人工衛星は、年々増えていき、使用停止された衛星はそのまま宇宙のゴミとなる。そうなることをわかっているはずなのに、技術力を見せつけたいのか、はたまた宇宙での覇権争いを一歩でもリードしたいのか、人工衛星の打ち上げは止まらなかったらしい。
そこから時代が進み、地球の環境汚染が深刻度を一層増した頃、ちょうど人口減少の波が全世界を襲った。しばらくして、人類はある計画を立案しそして実行に移すことになる。
月への移住計画である。もちろん移住に反対し、地球に残っている人間もまだ多くいると聞くが、彼らが生きられるのは時間の問題だろう。もはや世界の政治、経済、各国が解体され一時的にできた世界連合の中枢機関はそのすべてを月に移している。そこからは、地球からの人工衛星の打ち上げはなくなる。しかし、宇宙ゴミは多く残されている。
人類は月で暮らすことが当たり前になっている今、スプートニク1号は戻ってきたと、さっきのニュースアナウンサーは言っていた。しかし地球に戻さないと意味がないのではと思ってしまう。後で調べてみたがスプートニク1号の目的地は月だったらしい。だとしたら、案外、月に来ることは悲願なのかもしれない。