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〖短編小説〗1月17日は「おむすびの日」

この短編は1370文字、約3分30秒で読めます。あなたの3分半を頂ければ幸いです。

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世に言う『おむすび強盗』についての記事が今日の朝刊の一面だった。

白昼堂々の犯行!おむすび強盗現る!!
一昨日、T町の一人暮らしの向井さん(82歳)宅におむすび強盗が押し入った。午前11時頃、昼食の準備をしていた向井さんは呼び鈴が鳴り出たところ、目出し帽をかぶった男二人組が、ナイフをちらつかせて向井さんを脅し、室内に侵入。その後、悪びれることなくおむすびを要求した。なお、向井さん宅では昨日の残ったご飯が奇跡的にあり、電子レンジで解凍後、冷蔵庫にあった頂きものの明太子を入れて、犯人2人分のおむすびを握った。その後犯人は満足げにおむすびを平らげ逃走した。なお、向井さんに怪我はなかった。警視庁は、この2人組の行方を追うとともに、おむすび強盗には十分気を付けるよう注意を促している。

テレビをつけると、ワイドショーでも『おむすび強盗』の話題だった。

アナウンサー「連日報道されています、T町のおむすび強盗ですが、被害に遭われた向井さんの手記が報道機関に提供されましたのでご紹介します」

~以下手記の内容~
わたしも突然のことで、言葉も出ませんでした。おむすび強盗自体は存じ上げていましたが、まさかわたしが被害に遭うなどとは思ってもいませんでした。奇跡的に残り物のご飯があり、中に入れるおかずがあったから、助かったものの、ご飯やおかずが、もしなかったと考えるだけで恐ろしいです。そして事件のショックもあり、おむすびは握れない体になってしまったことに対して、犯人に強い憤りを感じます。一日でも早く犯人逮捕を願っています。

アナウンサー「えー、向井さんはショックのあまり、おむすびが握れないという大変痛ましい状態になってしまいました。今後、我々はどのようにおむすび強盗に備えるべきか、本日は専門家をお呼びしています。防犯コーディネーターの入家守(いりいえまもる)さんです。よろしくお願いします」

入家「はい、よろしくお願いします」

アナウンサー「えー、入家さん今回の向井さん宅の事件、どのようにご覧になられていますか?」

入家「はい、犯人は2人組ということですが、情報から推測するにかなり手慣れた犯行だと思います」

アナウンサー「どの点から見て取れますでしょうか?」

入家「はい、まず向井さん宅を入念に下調べしていると思いますし、何よりも向井さんの年齢も把握して犯行に及んでいます。犯人たちは、向井さんの年齢を考慮して、あえておにぎりではなく、おむすびと要求しています。この点から見て、犯人達は大変落ち着いていて、場数を踏んでいるものと推測できます」

アナウンサー「なるほど、大変興味深いです。では、実際にですね、我々が被害に遭わないためにどうしたら良いか、視聴者の皆さんへアドバイスをお願いします」

入家「はい、まずなにより大事なことは、残り物のご飯やおかずを一定量ストックしておくことが大切です。これを聞くと、そんな守りの態勢で大丈夫なのかと心配になる方もおられるかもしれませんが、逆に言うと、おむすびさえ差し出せば、命は助かります。ぜひ変に抵抗したりせずに、おむすびを提供したのち、速やかに警察に通報してほしいと思います」

アナウンサー「防犯コーディネーターの入家さんでした。本日はありがとうございました」

入家「はい、ありがとうございました」

1月17日は「おむすびの日」

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