〖短編小説〗1月16日は「閻魔参り」
この短編は737文字、約2分で読めます。あなたの2分を頂ければ幸いです。
***
釜休みの心得
明日、一日すべての亡者は休日となります。常に地獄の亡者として誇りと自覚をもって行動すること。
1、計画的な行動
普段規則正しい生活を送っている亡者諸君は、急に自由な日ができ羽目を外しやすい。従って、朝は普段通り起床し、一日の行動計画を作成すること。
2、計画的、継続的な反省
亡者であることを忘れることなく、教本「閻魔さまの教え~地獄からの声~」を熟読し、一旦心を落ち着かせること。閻魔さま、または担当鬼は基本的に亡者と同じく休みだが、決して気を抜かぬようにすること。緊急の要件がある場合、担当鬼の携帯に電話する。
3、健康で安全な生活
毎年そうだが、浮かれるあまり地獄池に足を滑らせて落ちたり、慌てるあまり牛車にひかれるものが続出するため安全に十分配慮すること。
また、暴飲暴食にも注意し、明日からまた地獄の日々が続くことを肝に銘じること。夜は早く就寝し、いつまでもスマホを見ない事。
4、家庭生活
一時的に現世に帰ることができる亡者もいるだろうが、家族と会う場合はしっかりと反省している態度を見せ、家族を安心させること。
なお、家に戻ったものは進んで家事を手伝い、手土産の一つも持って帰ること。(釜入口にお土産コーナーが毎年有志により設置)
事故や事件防止のために
毎年、必ず地獄に戻った時に、事件やトラブルを起こした亡者がいる。以下のことを特に気を付けること。
・亡者らしい服装で行動する。頭髪の加工は禁止(脱色、鬼パーマ等禁止)
・ゲームセンター、パチンコ、居酒屋などには立ち入り禁止
・SNSや出会い系サイトの使用は禁止
地獄の一員として、有意義に一日を過ごす事。なお明日は朝8時より釜の開門。階層ごと出席番号順に並び担当鬼の指示に従って、迅速に行動すること。
1月16日は「閻魔参り」