7月28日は「地名の日」
「あの、すみません。ここに行きたいんですけど」
目的地の地名が書いてある紙を見せた。
「あぁ、どれどれ」おじさんは紙を見て言った。
「あそこの十字路見える? あれを右に曲がって少し行くとすぐ分かるよ」
「ありがとうございます」
「おにいちゃん、年いくつ?」突然おじさんが聞いていた。
きっとこんな田舎で若者が道を聞いたから、ビックリしたんだろう。
「23です」
「そうかい、随分と若いんだな。気を付けて行きなよ」
「ありがとうございます」
おじさんと別れて、言われた通り十字路を右に曲がり歩き続けた。しかし、目指している地名には一向に到着しなかった。
もしかして、通り過ぎたかな……
今度は近くにいたおばあさんに聞いてみた。
「あの、すみません。ここに行きたいんですけど」
おばあさんは紙を見て「ここならすぐ近く歩いてすぐよ」と僕が来た方向を指さした。
「ちょうどあたしも家がそっちだから、送ろうか」と言ってくれた。
「ありがとうございます。お願いします」
やっぱり通り過ぎていたようだ。どうも田舎の建物はみんな同じように見える。立派な建物が多いのは確かだけども。
おばあさんの後についていくと、
「お兄さん、お若いようだけど、いくつだい?」と聞いてきた。
なるほど、この地区ではよほど若者が珍しいようだ。
「23歳です」
「そりゃお若いのぉ」とおばあさんは前を向いたまま言った。
「はい、到着。ここよ」
おばあさんはそう言うとあたしの家は、はす向かいだからこれからよろしくと言って、綺麗に整えられた花が供えてある立派な墓石の前で消えた。
おじさんとおばあさんに見せた紙を自分で改めて確かめる。
『○○地区共同墓地 C区画 49番』
目の前には僕の苗字が彫られた、必要以上に黒々とした真新しい墓石があった。墓石の前には線香が置かれ、線香から細い煙が空へと昇っていた。
ついさっき、誰かが線香をあげてくれたようだった。
7月28日は「地名の日」