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〖短編小説〗2月6日は「お風呂の日」
この短編は1611文字、約4分で読めます。あなたの4分を頂ければ幸いです。
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お風呂に入ろうと思ったら、湯船にマグロがいた。もう一度言います。お風呂に入ろうと思ったら、湯船にマグロがいた。
広くないうちのお風呂に、マグロがいた。窮屈そうに泳いでいるいや違う、フィットしている。そこでわたしは大変なことに気がつく。
マグロってずっと泳いでいないと死んでしまうんじゃない?
やべー、家のお風呂にマグロの死体が発見!!ニュースになって流れちゃうよー。わたしは未成年だからモザイクかかるよね?でも第一発見者として死体いや違う、死マグロはどんな状態だったか、インタビューされる。大変少し練習しておかなくっちゃ。
インタビューアー(以降イ)「最初に死マグロを発見したときは、どのような状態でしたか?」
わたし(以降わ)「はい、お風呂に入ろうとしたときに、湯船を見たらマグロがいました。その時は生きているか死んでいるか、わからなかったんですけど、マグロは泳がないと死ぬと聞いたことがあったので、家のお風呂狭いし、マグロ全然泳げてなかったので、死んでるかなと思いました」
イ「湯船の中のまだ死マグロではなく、ただのマグロだったときは多少動いたり、暴れたりしていましたか?」
わ「とても静かでした。少しだけしっぽ?おっぽ?の部分を動かしていた気がします」
そんなわたしの素敵妄想をかき消すように声がする。邪魔すんなし。
『死んでないのよー、てかあつっ!湯があちーって言ってるんですけど?虐待よこれ、動物虐待よ!マグロ虐待よーー』
脳の中に誰かの声?聞こえるっ、誰かの声!なんかすんごくSFチックな展開になってきた。近未来のぴたっとした宇宙服みたいの着て、宇宙ステーションで見たこともないオシャレな色したカクテル?をカッコいい火星人と飲むんだ(妄想でうっとり)
しかし、現実はきたねー一軒家の狭い風呂場で、全裸のわたしと生臭いマグロのどうでもいい会話です(現実でげっそり)
以下、この現実に耐えうる方のみお読みください。なんてね。
『おーい、おじょうちゃんどこ見てんの?こっちよこっち!湯船の中よ』
やっぱり、嫌な予感は当たった!マグロの声が聞こえる。なんで死なないのだろうと不思議に思い。マグロに問うた。
「てか、マグロって泳がないと死んじゃうんじゃないの?」
『それは、都市伝説よ。あとアタシは本マグロ』
「なんでマグロのくせに、わたしと会話できるの?しかもSFっぽい感じに」
『あたしマグロの神様だから、なんでもできるの。あと本マグロね。おじょうちゃんわかった?本がつくの。これがつくとくかないとでは大違いなの。すしざんまいの社長も言ってたわよ』
「なんでオネェみたいなしゃべりかたなの?」
『そういうのね、いま敏感な時代だから、よくないと思う。性には色々なかたちがあるの。おじょうちゃんも、もう少ししたら学校で習うわよ』
なんか難しいことをマグロが言ってる。つまり、マグロは泳がなくても死なないし、あ、あと本マグロで、オネェの神様なんだ。そう思うと、風呂場に充満したこの生臭せー匂いを我慢できるような気が、、、まったくしなかった。
『湯船の温度、ちょうどよくなってきた♪』
「いやいや、ちょうどよくなってきた♪じゃねーよ。早くどっかいってよ。全裸のわたしは早く湯船に浸からないと、寒くて死んじゃうよ」
すると、マグロ間違えた本マグロは、『めんごめんご。テレポート先を間違えちゃってさ』
そして、マグロ本体からものすごい光が放たれて、その瞬間わたしは、あ、これがマグロとの別れになることを悟った。自分の気持に正直になれなかったわたしは、マグロにひどく当たることもあった。だけど、忘れない、この出会いをわたしは忘れない。
「ありがとーマグローー元気でねーー」
『本マグロよー間違えんなーーー!本・マ・グ・ローー!』
光が消えると、マグロは姿をあ、本マグロは姿を消していた。そして湯船の中のお湯は、マグロの出汁がたくさんでていた。
これに入るの?まじ?
2月6日は「お風呂の日」