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9月7日は「生パスタの日」

みきお君と行く店は大体いつも決まっていて、サイゼか大戸屋で、サイゼではミラノ風ドリアを注文し、大戸屋ではなぜ大戸屋は地下一階と二階にしか店がないのかという説明をみきお君は一生懸命にしていた。
だいたい入店と同時にその説明が始まるので、店員さんに聞かれることになり、なんとも言えない空気が毎回流れた。

今日のぼくの気分はサイゼだった。

「生パスタって、何が生なんだ?」とみきお君が聞いてきた。

ぼくは冗談のつもりで「しっかりと茹でてないんじゃない?」と答えた。

「え、それはまずいだろ。あーでもラーメンでもあるか。博多ラーメンのばりかたとか」

「いや、それとは関係ないと思うけど……何? パスタ食べたいの?」

「あーうーん、生な。生パスタがちょっと食べてみたいかな?」

そう言いながら、駅前にオープンした生パスタ専門店のチラシを見せてきた。

「近いじゃん。今日行く?」

うーんとうなりながら「生パスタっておいしいのかな? どうなんだろう」と真剣に考えている。

同じ家の住んで、たまに外食する親子というのは仲がいいのかどうなのか。みきお君は僕の父親で、今年たしか63だった気がする。

「とりあえず行ってみようよ」そう言うと、

「うん、君がそういうなら行ってみようか」とソファーで悩むみきお君の心は決まったようだ。

9月7日は「生パスタの日」

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