【短いおはなし】2月22日は「忍者の日」
水遁(すいとん)の術の後のスムーズな着替えが今回のテーマだったと教えてもらっても、わたしの頭には食べ物のすいとんが浮かび、無性に食べたくなるだけだった。
「つまりさ、今の時代はスマートさが求められているんだよ。いつまでも水から上がってびしょびしょのままではいられないよ」
第135回全国忍者大会でのパネルディスカッションがいかに素晴らしかったか、彼は話してくれた。
わたしの彼は忍者だ。
忍者の彼女の朝は早い、出勤前にお弁当の準備。やはり体が資本ということで、タンパク質多め。なんてったって彼のために野菜ソムリエの資格も取った。それからきちんとアイロンをかけた頭巾に黒装束を準備。
日曜日だった昨日は、彼と一緒に手裏剣を磨いた。なんか色々な形のものがあって、優しい彼は一個一個説明してくれたけど、難しくて忘れた。
「今日、仕事で使う道具が届く予定だから受け取りよろしくね」黒ずくめの彼が玄関で足袋を履きながらそう言った。わたしは笑顔でお見送り。
荷物ってなんだろう? この前Amazonで頼んだやつかな。だったらわたしの頼んだ物も入っているかも。
家事も一段落し、彼のノートPCを借りて調べものをしようと思い、Googleを開く。すると検索履歴には『忍者 分身の術 修行 どれくらい』とか『忍者 職業 実在』とか『忍者 服装 普段』とか『忍者 頭巾 流行 色』とか『忍者 偽物 本物 見分け方』などがあった。
仕事熱心な彼をさらに応援したくなった。
ピンポーン! 「お届け物でーす」
午後になり荷物が届いた。段ボールを宅配業者から受け取りリビングにて開封の儀。中を開けてみると、まずは頼んでおいたわたしの化粧品やら細々としたものが出てきた。そして一番下には彼の仕事の道具と思われる箱があった。
箱には大きく説明書きが書いてあった。
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2月22日は「忍者の日」