自分が住む街をどうやって決めたのか
「住む」を決めたとき。
わたしは何が良くてその場所で寝起きしてご飯を食べて、生活したい、と思えたのだろうか。
立地、譲れない。駅から徒歩7分以内でないと冬場・夏場・梅雨の時期の通勤が苦痛になる。
日当たり、譲れない。布団が干せないと健康な生活があっという間に崩壊する。
間取り、バストイレ別、キッチンと部屋は仕切れる方がいい。
ロフト付きはダメ。2階以上でエレベータ付きでないと困る。膝が悪いから、荷物が多い時階段の昇降が難しくなるからだ。
治安はもちろんいいに越したことはない。
できれば、近くに水と緑の気配がある場所。
そして、家賃は収入の3分の1以内と決めている。だからできるだけ安く住みたい。
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わたしの住居選びは贅沢だ。
だけど、今まで上記の条件に合う部屋に住んできた。一度も「ここにしなければよかった」と後悔したことはない。
自分でもびっくりするくらい、部屋選びにはかなり鼻が利くし、いいタイミングにいい物件と出会えるから、引越し運はいい方だと思っている。
一方で、引っ越しで失敗して不満そうな人は多い。でも、同じような条件の部屋と周辺環境を備えた街は、実はちゃんと探せば結構ある。
じゃあ、なぜハズレを引いてしまうことになるのか?
それは物件探しのファーストステップが「地名」を指定することにあるからなのでは?と。
本当は「地域」を指定しない方がいい出会いがあるのでは、と思うのだ。
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わたしが住みたい条件は、街じゃない。やっぱり「部屋」だ。
そして次に、その部屋がある「周辺の環境」。それは街という大きな単位じゃなくて、自分の部屋と地続きの景観や静けさを左右する周囲の環境のこと。
周辺環境はもはや部屋のスペックの一部ですらあると思っている。
わたしとしては、部屋の条件ありきで、同じ条件の部屋があるそれぞれ違う街を広く紹介してもらえる方がありがたい。
何はともあれ、部屋(+周辺環境)が満足であれば、多少通勤が面倒でも「失敗した!」と思いにくい。
それなのに部屋を絞るより先に、地域を絞らされる。
物件選びの時にまず選ばされる街は、自分に都合が良くて、ちょっと知ってる印象で選ぶにすぎない。
自分がそこにする必然性っていうのは、案外なくて、条件が同じ街でも、知らないってだけで候補からこぼれ落ちる。
わたしの場合、「付き合っていた人が近所に住んでた方が便利」という理由で引っ越した街がある。
その街は何度か訪れていて知っていたけれど、遊びに行った時の印象だけでは全然住みたい街の候補には入ってなかった。
そもそも、はじめて彼の家へいった時は、駅からかなり遠く感じられたし、大きなスーパーは近所にない。書店も娯楽もなくて、正直家しかない何もない街だと思っていた。
ただ、たまたま近所に見つけた部屋はとても良い条件だったので、なんとなくいいかなと思って引っ越し、結局4年も住んだ。
その後、わたしはその街で一つ恋愛がダメになって、いい思い出ばかりじゃなかったけれど、引っ越すときには本当に名残惜しいくらいその街が好きになっていた経験がある。
自分が知らない街にもいい街があるんだなって気付かされた。
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外から来た人が知りうる街の情報は多くはないし、一見さんだと自分のライフスタイルに合う場所かどうかを測ることは難しい。
家探しに来る時間=その街で過ごす活動時間なのか?ということも考慮したほうがいい。
会社員の生活をしていれば、帰宅時間〜翌朝早朝と、週末が自分の過ごす時間。
ごくたまに「ああ、この街に住めたら楽しいだろうなぁ」と思う場所に出会うけれど、生活の一面として出会うのではなく、お出かけの中で出会うよそ行きの顔だ。
生活時間の街に出会うというのは大事だなあとおもう。
デート中の化粧バッチリな彼女もいいけれど、寝起きすっぴんと風呂上がりの顔も見ておきたいと言うような感覚の話だと思う。
部屋を借りれば、今まで出向いて、短時間しか体感できなかったその街にいる時間が増え、余白が生まれる。
その余白で気づく部分は、お出かけ程度では気づけない何か。
街に住むように出かけることができれば、きっと相性だってよくわかる。
そんな過ごし方ができるAirebnbは引っ越しの予習にはもってこいだと思っている。
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最後に。
わたしの街選びは理詰めで採点をした上で、最後の最後は直感で決めている。
第一印象って案外大事だという話だ。
今住んでいる関西には、今まで住んだこともなく、短期の出張しか来たことがなかった。
わたしが今の部屋を決める際、この街に気に留めた理由が一つだけあった。
昔、学生時代。
たまたま妹が住む街へ向かうための電車で通り過ぎた各停しか停まらない駅。
その駅のホーム沿いにずーっと並ぶ桜並木が美しくて、駅の名前を覚えていたのだ。
引っ越しの期限が迫る中、いい物件が見当たらなくて、どうしようか焦り始めた時にふと思い出したその駅名は、見事希望の条件の物件に出会わせてくれた。
桜が美しい街は、いい街だと思う。桜の手入れは簡単ではない。
そんな桜が大きく育ち、いい幹ぶりをしていたら、多分その街はいい街だ。
それは私の中で一つだけ信じているジンクスみたいなもの。
引っ越したのは6月、わたしはまだ、その桜並木の美しい姿を見てはいないけれど、これから来る春を楽しみなものにもしてくれている、本当に素敵な存在だと思う。
きっかけはとても些細なことだけれど、誰かの気に留まるってとてもすごいこと。
いい街へ引っ越してこれたと思います。
もうすぐ来る春、待ち遠しい。
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