20210326の日記
ときどき、ふっと思い出すことがある。それはたいてい自分のことではなく、ひとの、たぶんそのひとの、とっくに忘れているだろうことばかりである。忘れているか、特に思い出したくないことか。
今を羽ばたく、あの人気の俳優さんが何かの雑誌のインタビューで語っていたことを思い出す。「わたし、現場に下着を着けずに行ってしまったことがあります。家を出たら胸のあたりがなんだかすかっとしていて、ああ着けるの忘れたな、って思ったんですけど時間がなくて戻れなくて、そのままそわそわしながら現場へ行きました」
こんなことを、ときどき思い出す。名前は書かない。まず出典が曖昧だし、はっきりしたとしても、あんまり今は言われたくないだろうし。いや、もし伝えたとしても、そんなこと言いましたねー、と、笑い飛ばしてくれるかもしれないけれど。まず、伝えるすべなどとてもない存在なんだけれど。
たぶん、今、なんとなく、言われたくないのだろうなあ、というくらいのことを、わたしは、たびたび思い出す。あっ、と思いついたら周りや本人に言いたくなるのだけど、こらえる。あの頃といまでは、あなたはすっかり変わっているのだろうから。
ともだちも、知り合いも、有名人も、だれもかれにも、わたしはこんなことをときどき思い出してしまっている。
あなたがこどものころ、嫌いだったものも、好きだったものも、失敗も成功も、わたしは覚えてしまっているかもしれない。口に出さないけれど、あなたが思っている以上に、わたしは、あなたのことを思ってしまっている。