【小説】マザージャーニー / つきる秋 2
本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。
この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。
note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。
↑はじめからはこちらより
「明日から、しっ新学期なんだ」
ヨワオが私の少し向こうで、草取りをしながら言った。顔を上げると、ヨワオの丸いフォルムの向こうに、輪郭のくっきりした入道雲が見えた。目を細める。
ふつうの世界では、夏休みが終わる。
「行かないよ」
「いいと、お、思う」
「……私、もっとちゃんと変わった方がいいと思う?」
「えっ、ええと……」
また私たちはしばらく無言になって、ザクザクとカマで草を刈る音だけが続いた。
「こんにちは、双葉さん」
目の前に真っ赤な長靴がとつぜん現れた。見上げると、ジリジリとした日差しの中に立つ、白いTシャツのマリ先生が立っていた。
「いわおさんも一緒に頑張ってるのね」
「なっ夏休みなので」ヨワオは下を向いて、めがねをクイと上げた。
「―双葉さん、少し、お話いいかな」
私は先生の方は向かずに、草を取り続けた。
「明日始業式なんだ。どうかな、午前中で終わるし、新しい学期だから、来やすいかなと思って」
「……」
「みんなもいわおさんみたいに、双葉さんを助けたいと思ってるし、みんな待ってるから。みんなそろって卒業したいでしょ?」
先生は嘘をついている。草を刈る手に力が込もる。
別に助けてもらいたいと思ってないし、いつの間にそういうストーリーになってんのか分かんなしい、みんな待ってるとか知らんし。
私は私に集中させてほしい。
なんでみんなこんなに他人のことが気になるんだろう。てめーの人生にだけ集中してればいいじゃない。
「お腹の調子はどう?」
「別に」
「そっか、よかった。あの時はびっくりしたかもしれないけど、生理はね、とても大事でね。新しい命を受け入れる準備が、双葉さんにできたってことなんだよ。双葉さんが今がんばってる農業と同じ。それってすごいことだよ」
私は鼻息を鳴らして返事をした。
新しい命ね。
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