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【小説】マザージャーニー / めぐる、冬 4
本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。
この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。
note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。
↑はじめからはこちらより
↑こちらに全話まとまってます
↑前話
「お父さーん!」
山に入る農道を走りながら叫ぶ。夜の山はそれ自体、大きなおばけのようで怖い。けどたぶん、お父さんはこの山のどこかにいる。私の勘だ。
「お父さーん。お父さーん」
走って走って走った。
知っている田んぼ、畑、道、ぜんぶ頭の中で塗りつぶし、走り尽くした。
「お父さん……」
咳き込みながら膝に手をやる。と、お父さんが春に買ってくれたピンク地にハート柄の長ぐつが目に入る。どろどろになって、ハートの柄も薄れてきちゃった。ああ、この半年間、ずっと一緒だったな。
「お父さん……」
足の裏が痛い。
荒い息で胸を上下させながら、私が飛んだ日、遠くで聞いたお父さんの声を思い出した。
お父さんもこうやって、私のことを探していたのかな。震えて、胸がいっぱいで、怖くて、必死になって、どろどろになって……。
「……ごめんなさい……」
涙がにじむ。
行け、私。だってお父さんは、私を見つけてくれた。
私はまた、走り出した。
運命から?運命から抜け出したい。
運命の向こうに行きたい。
走れ。走れ、もっと走れ、私のからだ。
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