【小説】マザージャーニー / つきる秋 4
本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。
この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。
note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。
↑はじめからはこちらより
↑こちらに全話まとまってます
あたりが夕日にそまるころ、立派なはざかけが完成した。
みんなで、はざにかかった稲を見上げた。
木々の隙間から漏れる夕日は、稲の上でまだらに揺れていた。そのせいか、稲穂の黄金のカーテンは、静かに風に揺れているように見えた。
登さんが何気なしに、稲をひとつひとつなでていく。女の子の髪をなでているようだった。その姿は、おじいちゃんの登さんじゃなくて、誰かのお父さんだった登さんに見えた。
「そうやると、何が分かるんですか」
「触れば分かるよ」と、登さんはふふと笑った。
私も同じようになでてみた。
籾が手のひらではじけながら、すべっていく。心地いい粒の重みは、命の重みだった。太陽を浴びたぬくもりが、稲の体温みたいで、手の中で目をとろりとさせて、まどろんでいるようだった。まだ生きている。
「刈ると死んじゃうんじゃないんですね」
「ずーっと生きてるよ。こうやってるときも、玄米になっても、精米しても、毎日少しずつ水分も味も変化してくからね」
「いつ死んじゃう?」
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