【小説】マザージャーニー / つきる秋 3
本作は2020年「News Picks New School 大友啓史×佐渡島庸平『ビジネスストーリーメイキング講座』の6ヶ月間で作り上げ、kindleには販売中の小説です。
この6ヶ月間は私にとって、転機となる半年間でした。知りたかった学び、出会いたかった仲間、本当に楽しく作品と向き合い続けることができました。
本作を完成させるにあたり、大友啓史監督、株式会社コルク 代表取締役 佐渡島庸平さんはじめ、同じ受講生の仲間たち、運営スタッフのみなさま、そして新たなチャレンジを応援してくれた夫より、多くの助言をいただきました。
note用に少しだけ微修正してます。
ぜひご覧くださいね。
↑はじめからはこちらより
そこらじゅうでコンバインの音が聞こえる。田んぼの周りには稲の粉がはじけ、太陽の光を浴びて、粉々の宝石になって舞っていた。眩しい。その中を赤とんぼたちがスタッカートを刻みながら飛んでいた。
稲刈りが始まった。
「さぁ、今日はプレミアムだぞ!」
ケンさんが今日も真っ赤なつなぎで、両手を広げた。
「プレミアムって、なんのことですか」
私は、稲刈りカマを片手に提げ、ぷらぷらさせながら、作業場にみんなが集まるのを待っていた。
「今日ははざかけ! 今まではコンバインで刈って、乾燥機に入れてたろ? 今日の田んぼは、はざに架けて天日干しにする! 天日干しのお米はプレミアムとして売る! これ双葉の母ちゃんのアイデア!」
「なんで天日干しなら、プレミアムになるんですか?」
「機械だと一気に乾燥させるだろ? そうじゃなくて二週間くらい、じっくり太陽で乾かすと、籾にじっくり栄養がいく。らしい。そして美味しい、らしい!」
「なんで、じっくり栄養がいくんですか」
「もー、双葉は『なんでなんで』ばっかだなぁ!」
ケンさんのおどけた姿に、口が緩んだ。
なんでなんで、か。私は、お母さんにもっと「なんでなんで」を聞いてもらいたかったのかな。
そうこうしていると、田中のおばちゃんや、登さんもやってきた。そこに混じって、はずかしそうに半歩後ろをヨワオが歩いてきた。
「また来たの!?」
「双葉さんのお父さんが、誘ってくれて……」
お父さんは向こうで、親指を立てて笑っていた。私は眉を片方上げた。余計なお世話を。でもなぜか、悪い気はしなかった。
今日は、いつもより賑やかだ。輪になるみんなの顔を、ぐるりと見た。
「どの日に死んでも、おらには最高」
登さんの言葉を思い出す。
うん、最高だ。
今年いちばんの、わくわくする気持ちに満たされた。
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