初日の出を見に山に登る、とは。
あけましておめでとうございます。
一応言ってはみるものの、実は年々お正月感は薄れている。
自分でおせちも作らないし、お雑煮は食べるけどそれ以外は適当。
大晦日にテレビを人にあげてしまって紅白も見れない。
我が家にあるのはネット環境とPCとスマホ、そしてネコ。
大晦日もお正月もいつだって日常の一つなのだ。
そんなお正月っ気のない私だけど、今年は友人に「初日の出を見に行こう」と誘われて、急に「行ってもいいかな」と思って話に乗ってみた。
今年の目標は実は「身体性を取り戻す」なので、まず体を使って何かしたいなと思っていたところに、初日の出を見に山に登るのはうってつけだったからだ。
5年前くらいまでの何年間か、夫とそこそこハードな登山が趣味だった。
夫の腰痛とか高山病とかがひどくて引退していたけど、とりあえずそれっぽい装備は残っていたので一安心。
3:30に起きて朝食をとり、カラフルなインナーダウン、レインウエア、トレッキングシューズなどをゴソゴソと出してきて、5:00に集合場所へ。
その後、山の麓まで何台かで連なって行く。
暗すぎる。一人では絶対運転したくない。。。
5:30すぎくらいに各務原アルプスの端っこ?から、明王山を目指して登山開始。
登山といっても40分くらいの軽登山なので気楽・・・・
な、はずだったけど、久しぶりだとさすがにしんどいね。。。
キーンと冷たい風が、耳と鼻の先を冷やす。
顔がパリパリに冷たくなって行く。
歩いていると体はそこそこ暑くなってくるのに、顔だけがずっと冷たい、この感覚久しぶりで気持ちいいなあと思った。
途中でレインウエアを脱ぐ。
ダウンの隙間から風が吹き抜けて、体が一瞬冷える。
気持ちいい。
ゴロゴロとした砂利や岩のある、そこそこ健脚者向けの登山道。
みんな、楽しくおしゃべりして登っていたけど、私はついて行くのに必死なのと、静かに黙々と登るのも好きだから、ずっと静かに足元だけ見ていた。
ヘッドライトで見える範囲だけが自分の世界。
登っている間ずっと、今年は何をしようかなって考えていた。
妹のいるベトナムに長期間滞在したいな、でもネコネコはどうしたらいいのかな、あの子達飛行機乗れるだろうか、でも知り合いの子もブラジルまでネコ連れていってたし、いやいやうちの子達は繊細だから無理か、今頃ネコたちどうしてるかな、ネコってお正月ってわかんないよね、当たり前だけどそういうのいいな、なんかただただ生きてるって感じがするよね、ネコか、、、ネコいいよな、、、
みたいな。
ふと顔を上げると綺麗な夜景。
日の出前にこんなに街はキラキラしてるのか、、、不思議な気分。
空も白み出してきて、朝が近いのがわかる。
目が慣れてきて、みんなの顔もよく見えるようになってくる。
登山は基本的によく知っている人とだけしか行ったことがない。
特に数時間登り続けたり1泊するような長時間拘束の登山は、多くても4名までのパーティで構成し、基本的には夫を含む同じメンバーばかりだった。
体調をすぐ相談できて、場合によっては別行動も可能な、単独行だけどたまたま一緒に行く、くらいの感覚で居られる気軽な仲間たち。
そうじゃないと、体力の前に気を使って疲れてしまうからだ。
もちろん、40分くらいの軽登山なんて対して気を使うほどの距離も時間もないのだけど、それでも誰かと何処かへ出かけるのって実は私はとても緊張する。
誰でもだと思うけど気を使ってしまうことによって疲れる。
話を合わせたり、歩調を合わせたり、休憩はどうするとか、滞在時間はとか、、、、
ああ、これは山に限らず日常の行為でも同じか。
人数が多くて知らない人がいる場合、どうしても楽しさよりめんどくささが勝ることが多くある。
だけど不思議と、今日はとても気楽な気分だった。
誘ってくれた友人の人柄もあるだろうし、メンバーの屈託のなさもあるだろうし、2時間程度の短い時間の遊びだし、気を使わなくて良い、とても楽しい時間だった。
もしかしたら、自分が気にしているだけで世の中はもっと気楽でいればいいのかもしれないな。
いつも考えすぎなんだろう。
ちゃんとしようとしすぎているんだろう。
山の尾根はオレンジに、そして濃い紺色のグラデーションの空が広がって、星が消えていった。
もうすぐ頂上、日の出も近い。
街が見えてきた。
だけどまだ陽は昇っていない。
ぼんやりと白い景色を見ながら、なんだか懐かしいなあと思った。
日の出自体は登山をしていた頃に何度も見たことがある。
富士山でも見たし、白山、常念岳、針ノ木岳、、、
高い山の日の出は特別な感動がある。
特に夏の登山は、日の出前は極寒だけれど、日が昇った瞬間から体が解凍されて行くように暖かくなり、その瞬間はびっくりするくらい生きる元気を与えてくれる。
日の出の瞬間がすごく好きなのは、その、日常では決して味わえない、身体のリアルな変化を感じられるからかもしれない。
寒い寒いと言いながらたくさんの人の中でまみれて見る日の出は、感動というよりも、「なんか今日楽しかったな、一区切りついたな」みたいな妙な安心感と嬉しさだった。
あっという間にあたりが明るくなり、日の出とともにみんな写真を一通り撮って、すぐに下山に向かう。
その、一瞬のための刹那。
ちょっと笑えてきてしまった。
一瞬の初日の出を見るために寒くて真っ暗な山を登る人たち。
そして案外すぐに下山する割り切りの良さ。笑
もしかして、頂上に人があまりいなくて、夫と二人だけとかだったら、持ってきたおにぎり食べて、あったかいお茶飲んで、しばらく山を楽しんでいたかもしれないな。
でも、なんていうか、「よし、見れた見れた、よかったね!帰ろ!あったかいお風呂はいろ!」みたいなノリが気軽で気分が良かった。
とにかく私は楽しかったのだ。
一緒に行った仲間たちがこれを読んだら、何大げさなこと書いてんの?と笑うかもしれない。
優しくて楽しい人たち。
連れて行ってくれてありがとうね!