壊れたものは元に戻らない

秋晴れが美しい。

晴れていることが美しい。

写真も撮らず光だけを見つめる。

色々なことに諦めがついてきた。

子どもをうまく愛せない元夫にも、

うまくいかない人間関係にも。

子どもたちの洗濯物を干しながら思う。

離婚のきっかけになったのはある日のDVだったが、

あの日いちばん傷ついたのは、元夫が子どもの椅子をめちゃくちゃに壊したことだったと。

室内で暴れる音を、庭で立ちすくんで聞いていた。

木が割れる音。

椅子の裏には、子どもの名前と組み立てた日付が書いてあった。

そんな思い出も粉々に砕けた。

彼が壊したかったのはなんだったんだろう。

朝起きた長男が、自分の椅子だけ無いことに気付いた。

見つからないように隠しておいた椅子を見つけてしまった彼は、あの時何を思ったのだろう。

今でも音が怖い。

テーブルには今も無数の穴があいている。

大学の単位認定試験をパソコンで受けながら、

長男の習い事の愚痴をきく。

苛立ちを、次男にぶつけて泣く。

「俺だけ勝とうとしても、皆が同じ気持ちじゃないと勝てないんだよ」

家族もそうだと思う。

皆が家族を守ろうとしなければ、

誰か一人でも壊れてしまうことを望んでしまえば、簡単に壊れてしまう。

今日も慌ただしかった一日が終わる。

明日の朝、仕事が終わったら

海に行こうと思う。

少しずつ少しずつ

心を戻していく。